第十四話「モンド・グロッソ」
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せるんだからさ? 不器用な俺なんかと大違いだ」
「そんなことありません。狼君だって……」
「ま、こんな俺でも最低限居場所があればそれでいいさ? それ以上は何も望まないよ?」
「……」
居場所があるなら他は望まない。それを聞いて、弥生は恐る恐る彼にこう尋ねる。
「あの……狼君、お尋ねしたいことがあるんですけど?」
「え、なに?」
ヤバいことでも聞いたか? そう、俺は焦った。
「その……御好みの女性は居ますか?」
「え、御好……?」
俺は首を傾げた。
「その……ちょっとお尋ねしてみようかと?」
「好みの娘か……そうだな? しっかり者で優しい人かな? でも、俺に彼女なんて贅沢だよ?」
「そんなことありません!」
いきなり、怒る弥生に俺は少しビクッとした。
「えっ? ど、どうしたの?」
「あ……いえ、いきなりすみません」
――どうしたんだろう?
いつもの優雅な彼女とは違う。いったい何があったんだ?
それからお互い黙りながら食事を終えて、弥生は食器を片づけ、俺はシャワーを浴びて寝巻に着替えた。
「あ、先にシャワーつかって悪いね?」
寝巻に着替えた俺は、これからシャワールームへ向かう弥生に軽く詫びた。
「いえ、別にいいですよ? 明日も実技授業のため、お早めに休まれてください?」
「うん……」
俺は、先にベッドに潜った。けど、弥生のシャワーを浴びる音を聞いて胸がドキドキし、眠ろうにも眠れなかった。
「あら? まだ起きてたんですか?」
「う、うん……ちょっと寝付けなくて」
本当は、彼女がシャワーを浴びる音に興奮して寝れなかっただけ。さらに、その彼女が隣のベッドで可愛らしい寝息をたてて寝るのを想像しただけでさらに眠れなくなる。今夜は緊張する夜が続きそうだ。もう、明日の実技授業どころじゃないよ?
「おやすみなさい?」
「ああ、おやすみ……」
部屋の明かりが消え、俺は彼女と一夜を共にした。緊張は長く続いたが、流石に緊張することすら疲れて、いつの間にか俺は瞼が重くなっていった。
*
一夏と同室になったヴォルフは、消灯時間になってもベッドで眠る気配は無かった。彼は、部屋から出ると、寮の中を歩き回った。無論、ラウラの暗殺を行うために彼女の部屋の様子を窺おうとするのだ。寮長の千冬が巡回していないことを確認して、彼はラウラの部屋まで来ると、小型カメラをドアの錠穴へ差し込んだ。だが、室内にラウラの姿はどこにも見当たらなかった。
――居ない?
しかし、寮の中に彼女の姿は見なかった。もしや、こちらの気配に感づいて隠れた? いや、このカメラには生体反応を示すシステムも搭載されている。熱源はルームメイトのしか感じ取れない。
「外か……?」
その感を頼りに、ヴォルフはふと寮長室へと向かった。すると、そこには彼の予想通り千冬の姿が見
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