第十四話「モンド・グロッソ」
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に俺たちへ語りだした。
「ええ……今から三年前の出来事です」
*
三年前、一夏が中学生の頃だった。姉の千冬が海外で行われるISの世界大会に出場するというからと彼女から観戦チケットと飛行機のチケットを貰ったが、当時思春期の真っただ中である一夏はその誘いをキッパリ断った。前々から、厳格な姉を毛嫌いしており、女尊男卑になってからさらに千冬のことを嫌うようになったのだ。また、チケットを渡す際に発した彼女特有の命令的な口調が一夏の機嫌を損ねたのも一理ある。
そして、お互い口論が生じて千冬の放った平手打ちが一夏に当たり、彼はそのチケットを千冬の前で破り捨てて部屋へ駈け込んでいった。
それから両者は翌日まで口を利くことなく、千冬は一夏と顔を見合わせることなくそのまま空港へと向かった。一方の一夏は休日のため親友の自宅へ遊びに行った。
しかし、千冬が日本を離れてから数日後、何者かの視線に気付き、監視されていることに薄々気付き始めた。テレビでは見ていないが、親友によると千冬は近々決勝へ突き進むらしい。そんな姉が、次々と決勝へ進むにつれて一夏に対する監視は多くなり、そしてある学校の帰りのことだった。
一夏は、謎の黒スーツの男たちによって誘拐されてしまったのだ。
人気のない暗いトラックのコンテナへと閉じ込められ、ドラム缶に縛り付けられて監禁されていた。おそらく、自分を人質に取って千冬の決勝を諦めさせようというのだろう? どこの国かは知らないが、なんとも卑怯な考えだ。
しかし、彼が監禁されてから数時間が経ったある出来事だった。外で警備している男たちが、何者かの襲撃にあって、次々と悲鳴を上げながら倒れていく。声と音だけでわからないが、見知らぬ誰かに、黒スーツの男達が次々と叫びと命乞いをしていた。
……そして、コンテナのハッチがスパッと切り刻まれ、そこから日の光と共に現れたのは、
――姉貴?
そう、呟いたが違った。姉の千冬ではない。それは着物を羽織り、そして日本刀を担ぐ侍の姿だった。しかし、顔つきは日本人とはいえず白い肌に束ねた金髪、青い瞳で彼を見つめる顔の整った美男の白人、つまり西洋の人間であった。
――侍の……外国人?
「怪我はないか?」
外人とは言えない上達した日本語で一夏に話す白人の侍は、刀で一夏を縛る縄をドラム缶ごと切り裂いて、共に脱出した。
日の光を見て、安心を取り戻した一夏は、白人の侍へ礼を述べた。
「あ、ありがとうございます! 助かりました……」
「いいってことよ? それよりも、危ないところだったな?」
華麗に刀を鞘へ納刀する白人の侍に、一夏は見惚れていた。ただ、「カッコいい!」という感想しか今の彼にはない。
「自宅まで送り届けてやりたいが、長居はできない。時期に君の姉さんが来ると思うが……」
と、彼は一夏へ背を向けた。
「あ…
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