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おぢばにおかえり
第十八話 プールですその十一
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「何か。それ聞いたら」
「まあ気を落とさない落とさない」
「それでね」
「ええ」
 また私に話してきます。
「夏よ」
「夏ね」
 今更言うまでもないですけれど。
「夏はどうするの?」
「まずは部活とおぢばがえりよ」
 それが第一です。
「それが終わってからは実家に帰って」
「何するの?」
「教会での仕込みかしら」
 これなんです。実家が教会なんで。やっぱりこれはついて回ります。
「それが第一ね」
「神戸だったわよね。実家」
「そうよ。神戸よ」
 これはもう皆知ってることです。神戸の長田、下町です。そこで中学校まで育っていました。何か遠い日の思い出になっているのはどうしてでしょうか。まだそんなに日は経ってはいないのに。
「何か懐かしいけれど」
「神戸がなのね」
「最初ここに来た時は本当に馴染めるのかしらって不安だったのよ」
 本当に。やっていけるかしらって。不安で仕方ありませんでした。
「けれど上手くやってるじゃない」
「ねえ」
「先輩も優しかったし」
 長池先輩です。何から何まで優しくして下さいます。
「それに」
「それに?」
「何だかんだで息抜きできるしね」
 これがかなり重要だと思います。
「商店街とかでね」
「ああ、それ大きいわね」
「あと本屋で」
「ええ。あとスイーツ」
 つまり甘いものですね。これが有り難いです。
「美味しいわよね」
「とてもね」
「美味しいなんてものじゃないわよ」
 皆甘いもの大好きです。特に。
「詰処じゃいつも貰えるのよね」
「チョコレートにクッキーとか。差し入れでね」
「あっ、ちっちのところっていいわね」
 私がチョコレートやクッキーのことを話に出したらこう言われました。
「そんなのくれるなんて」
「あとは飴とか」
 これも多いです。
「おせんべいにキャラメルも」
「何か甲子園みたいね」
「これでビールがあったら」
「ビールは流石にないわ」 
 あることはありますけれど私達が飲まないだけです。というか高校生でビールを飲むってそれこそやってはいけないことなんですけれど。
「けれどお菓子はね」
「そうそう、欠かせないわよね」
「寮じゃ一つ一つ袋の中で潰して粉みたいにしてから食べないといけないけれど」
「嘘・・・・・・」
 自宅生の娘がその話を聞いて驚きです。
「それ本当!?」
「冗談よ、昔の話よ」
「ねえ」
 昔は本当にそうだったらしいです。私も聞いただけですけれど。
「食べるのは二分で毎朝四時半起き」
「先輩の朝御飯のおかわりとか部屋のお掃除とか」
「シャーペンの芯を出すのもいちいち部屋の外でだったらしいわね」
 聞いた話によるとあの帝国海軍の兵学校というところの一回生みたいな厳しさだったそうです。私は
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