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銀河英雄伝説〜其処に有る危機編
第六話 士官学校には危険が一杯
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生達と話している。そして候補生達は中将を尊敬の眼差しで見ていた。溜息が出そう、外面だけは良いんだから……。あの卒業式以来ヴァレンシュタイン中将は近年稀に見る名校長って言われているらしいけど少年達、騙されちゃ駄目よ。目の前の中将閣下はとんでもない人なんだから。

今日もエーレンベルク軍務尚書閣下から中将にTV電話が有った。偶々私が出たんだけど唸る様な声で“ヴァレンシュタインは何処だ”って睨まれたわ。直ぐに中将に代わって席を外したから話の内容は知らないけど想像は付く。多分また碌でもないレポートを出したんだと思う。中将がアレを出す度に何かが起きる。まあ捕虜交換の件では助けて貰っているから感謝はしているけど……。

「閣下は逃げ、あ、撤退した事は有るのですか?」
「馬鹿、そんな事有るわけないだろ」
「そんな事は無い、逃げた事は有るよ」
候補生達が“えーっ”と声を上げる。私が副官になってからは無いからその前だろう。ニコニコしているから余り大した事は無いのだと思う。

「本当ですか?」
「本当だよ。ヴァンフリート4=2ではもう少しで負けそうになって逃げた。もっとも上層部は逃げたとは思わなかっただろうけどね」
ヴァンフリート4=2? 帝国軍の大勝利だった。それに中将が居た艦隊は最大の武勲を上げた艦隊の筈だけど……。訝しんでいると中将が私を見て“本当ですよ”と言った。

「地上基地を攻略中に反乱軍の艦隊が近付いてきたんです。来るのは想定していましたが予想よりも早かったので慌てました。まあ相手を騙して逃げましたが内心ヒヤヒヤでしたよ」
中将が肩を竦めると候補生達が感心したような声を出した。私もちょっと驚いた。そんな事が有ったんだ。

「退く事を懼れてはいけないよ。必要が有れば躊躇わずに退く。そのためにも逃げる方法を覚えておくんだ。命は一つしかないし大事に使えば長持ちするんだからね。粗末に扱ってはいけないよ」
「はい!」
候補生達が大きな声で答えるとヴァレンシュタイン中将が嬉しそうに頷いた。そして候補生達は頬を紅潮させている。なんか一番校長にしてはいけない人が校長になっている様な気がした。……多分、気のせいよね。



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