第六話 士官学校には危険が一杯
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、これです」
「戦争における非戦闘部隊の役割……、補給関係の本のようですが」
「ええ、戦闘部隊が効率的に戦闘を行うにはどれだけの後方支援が必要か。それが書かれています。実際には軍には補給だけでは無く人事や経理、総務なども有りますから膨大な非戦闘部隊が存在する事になります。軽視されがちですけどね」
ヴァレンシュタイン校長閣下とフィッツシモンズ少佐が一冊の本を見ながら話している。シーフェルデッカー? 聞いた事が無いな。一体誰なんだろう? 戦争における非戦闘部隊の役割って本も知らない。ハルトマン、エッティンガーに視線を向けたけど二人とも首を横に振った。後で僕も読んでみよう。孫子を読んでみたけど面白かった。ハルトマン、エッティンガーも面白かったって言っている。でも訊きたい事も有るんだよな。あ、少佐が僕達に気付いた。校長閣下も僕達を見ている。訊いてみようかな? 如何しよう。
「精が出るね、勉強かな、それとも調べもの?」
迷っていると校長閣下が近付いてきてニコニコしながら声をかけてきた。閣下っていつもニコニコしていて近所の優しいお兄さんみたいだ。
「はい、ツィーグラーの戦略戦術の一般原則を読みたいと思って来ました」
ハルトマンが答えると閣下がウンウンって頷いた。
「あの、孫子を読みました。凄く面白かったです」
「自分もニヒェルマンに薦められて読みました」
「自分もです、面白かったです」
閣下が“それは良かった”と嬉しそうに言ってくれた。
「でもあれは偉い人が読む本なんじゃないですか」
僕が問い掛けるとハルトマンが頷きエッティンガーも頷いた。孫子って読んでいると君主とか将軍とかいう言葉が出てきてその立場の人は如何すべきかって事が書かれている。士官候補生の僕なんかが読んで良いのかな? そう思ったんだけど。
「そういうところは確かにあるね。孫子は孫武という人が書いたのだけど彼が生きていた時代は占いで戦うかどうかを決める事が多かった。まだ用兵学が確立していない時代だったんだ」
占いで決める? 思わず“えーっ”と声を上げてしまった。僕だけじゃない、ハルトマン、エッティンガーも声を上げて驚いている。少佐も目が点だ。そんな僕達を見て閣下が“本当だよ、亀の甲羅を焼いて占ったという話もある”と言って可笑しそうに笑い声をあげた。占い? 亀の甲羅? そんな昔の人なの、孫武って。
「孫武はその事に疑問を持って戦争を科学的に分析し戦争とは何なのか、戦争とは如何行うべきかを書いた。それが孫子なんだ。国家指導者、軍の指導者、指揮官向けの軍事指南書と言えるね」
「じゃあ自分達が読んで意味が有るんでしょうか? 面白かったとは思いますけど」
ハルトマンが自信無さそうに訊ねた。
「勿論、意味は有るよ」
校長
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