第六話 士官学校には危険が一杯
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判断は下せないかもしれない。
「でも負けたら意味が無い。あれが実戦だったらと思うとぞっとするよ。俺の判断で五十万人が戦死したんだから」
ハルトマンがぼやく。げんなりだ、気が滅入るよ。
「シミュレーションだけど凄く迷ったよ。あれが実戦だったら如何なんだろう。やっぱり迷うのかな、でも迷ってる時間なんて有るのかな。その場で決断を求められたら……」
「……」
「ほんの小さなミス、些細な誤認でとんでもない犠牲が出る……、校長閣下の言う通りだと思ったよ」
ハルトマンが首を振りながら溜息を吐いた。
「無能と蔑まれるか、臆病者と蔑まれるか、厳しいよね」
ますます気が滅入った。今日も消化不良だ。話題を変えよう。
「もう直ぐ夏休みだけど如何するの?」
三人は帰省するって答えた。一人はマリーンドルフに居る親戚の家に行く。そして僕を含めてハルトマンとエッティンガーの三人は寄宿舎に残る。家に帰りたいけど遠いからな、片道だけで二十日以上かかるから帰るのは到底無理だ。期末試験で盛り返して何とか三年次の専攻は戦史科に進む事が出来たから会えば喜んで貰えると思うけど……、会えるのは卒業式だな。
夏休みは如何しようか? 前から読みたいと思っていた孫子でも読んでみようかな? 九月になったら直ぐに中間試験だから勉強もしないといけない。校長閣下を始め教官達も居るから勉強を教わろうかな。話を聞くのも良いかもしれない。色々と為になりそうだ。実は士官候補生ってオーディン在住の生徒よりも地方出身者の方が全般的に成績が良いって言われている。
その理由の一つが年に三回有る長期休暇、夏季休暇、年越し休暇、春期休暇の過ごし方に有るらしい。僕ら地方出身者は寄宿舎にいるからね、士官学校でついついシミュレーションで遊んでしまったり図書室で本を読んだりする。熱心に勉強するとは言えないけどそれなりに勉強してしまうんだ。それが成績に影響するって言われている。夏季休暇まであと一週間、もう一踏ん張りだ。
帝国暦487年 8月 15日 オーディン 士官学校 ミヒャエル・ニヒェルマン
お昼を食べてからハルトマン、エッティンガーと図書室に行くと校長閣下が副官のフィッツシモンズ少佐と一緒に本を探していた。エッティンガーが“少佐だ”と小声で呟く。こいつ、少佐に興味有るんだ。背がすらっとして美人だからな。それに赤褐色の髪と瞳が凄く印象的だ。エッティンガーだけじゃなく他にも少佐に憧れている候補生は結構いる。少佐は反乱軍からの亡命者だけど反乱軍って帝国と違って女性でも前線に出るんだよね。当然だけど少佐は士官教育を受けている。反乱軍は士官学校も共学らしい。帝国じゃ信じられない事だ。
「ライムント・シーフェルデッカー、これですか?」
「ああ、そうです
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