第六話 士官学校には危険が一杯
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出来れば候補生達にとって戦術的勝利の持つ比重が小さくなるだろう。戦術的勝利に拘らなければその分だけ不必要な犠牲を強いる事も無いし長生き出来る確率が増える。
候補生達には軍事だけじゃなく政治、経済についても教えないと。特に自由惑星同盟とはどういう国なのか、その辺りを理解させたい。単純に反乱軍という認識じゃ困るんだ。それに戦争が経済に、国家に及ぼす影響も考えて貰わないと……。如何したものかな、一度俺が全校生徒を対象に講話という形で教えるのも良いかもしれない。大勢の前で話すのは苦手だが授業に取り込むというのはちょっと難しいからな。候補生にまずは関心を持たせる事から始めよう。夏休み明けにでもやってみようか。
帝国暦487年 7月 25日 オーディン 士官学校 ミヒャエル・ニヒェルマン
うん、今日の夕食はなかなかいける、当たりかな。一緒に食べている六人も美味しそうに食べている。士官学校の寄宿舎で出す食事は量は多いんだけど味が……。昨日のシチューは牛肉が嫌になるほど硬かった。消化不良を起こしそうだったし顎も疲れた。きっと皆の顎を鍛えるためにあの肉を使ったんだろう。白兵戦技の訓練の一環に違いない。
「今日のシミュレーションはきつかったよ」
「え、なに、相手が大軍だったの」
「いや違うよ、こっちの五割増し。戦うか退くか、本当に迷った」
“そうだな”、“俺も前回がそうだった”と声が上がった。おいおい、口に物が入っている間は喋るなよ。飲み込んでから言え、行儀が悪いぞ。
「で、如何したの? ハルトマン」
僕が質問するとクラウス・ハルトマン、五割増の相手とシミュレーションした奴は困った様な顔をした。
「二倍なら退いたけど五割増しだからな。戦ったよ。負けてもシミュレーションだから……」
「勝ったのか?」
「いや、負けた。あれなら最初から撤退した方が良かったな。撤退戦の勉強になった」
皆、沈黙だ。ちょっと声がかけ辛い。ハルトマンは沈んだ表情をしている。
新学期が始まってから授業の内容が少し変わった。特に変わったのはシミュレーションでコンピュータ相手に結構不利な条件で戦わされる事が時々ある。学校側の説明ではこの対戦は成績には直接関係しないらしい。つまり逃げても負けても構わない、生徒の判断に任せるというのだけれどそれだけにどう判断するかが難しい。いつものように単純に勝てと言われる方が楽なんだけどそれじゃ実戦に即していないという事のようだ。
「二倍なら簡単に撤退を決められるけど……」
「うん、五割増しだと戦意不足って取られかねないからな」
皆が頷いた。ハルトマンも頷いている。そうなんだよね、誰だって臆病者とは思われたくない。なかなか簡単には撤退する決断は出来ない。自分だって撤退の
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