第二百三十四話 燃え落ちる寺その十一
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ここでだ、彼等は首を傾げさせて言った。
「そもそも殿は何故謀反を起こされた」
「それじゃ、上様にな」
「殿は上様に忠義を尽くしておられた筈じゃ」
「それに上様は殿のお母上にもよくして下さっていてな」
「服もよく贈って頂いて」
「殿もそのことを恩義に感じておられた筈」
「お家取り潰しという話もない」
佐久間や林と違ってだ、確かにそうした話はなかった。
「それでどうしてじゃ」
「何故殿がご謀反じゃ」
「上様を攻められたのじゃ」
「殿が天下人になられるのか?」
「まさか」
「そんなことはない」
「絶対にな」
こう言うのだった、だが。
そしてだ、またその闇の具足の者達を見て言うのだった。
「それにあの者達」
「あの者達も急に出て来てな」
「ああして何の迷いも戸惑いもなく上様を探しておられるが」
「何の迷いもなくな」
「そもそもあの具足はどの家の者達じゃ」
この疑念も起こったのだった。
「上杉家か?」
「上杉家の兵は丹波におる筈がなかろう」
「それに上杉家の黒はもっとよい色じゃ」
黒と闇の違いも語られた。
「あの様な嫌な色ではないぞ」
「そうじゃな、あれは闇の色じゃ」
「本願寺にあった色じゃぞ」
「本願寺の灰色の者達とはまた 別にな」
「おった者達の色ではないか」
「ではあの者達は本願寺か」
「本願寺の者達か」
いぶかしむ声での言葉だった。
「あの寺がまた何かしたのか」
「いや、本願寺なら坊主がおるぞ」
「坊主はいないぞ」
それは一人もというのだ。
「ましてや本願寺は百姓ではないか」
「百姓はおらぬぞ」
「家はわからぬがよい具足を着けておる」
「では何者じゃ」
「一体何者なのじゃ」
「本願寺でないとすると」
「あの者達は」
青い具足の者達はいぶかしむばかりだった、そしてだった。
彼等は遠巻きに見る、そして。
明智の傍の重臣達はだ、こう言った。明智に。
「あの、殿」
「それではですが」
「上様、いえ前右府様のご遺体は」
「それは」
「まだ見付かりませぬが」
「どうされますか」
「一日探せ」
明智は表情のない顔で彼等に答えた。
「よいな」
「一日探して」
「それでないとなると」
「その時は一体」
「どうされるのでしょうか」
「都を押さえる」
こう彼等に答えるのだった。
「まずはな」
「まずは、ですか」
「そしてそのうえで、ですか」
「次は」
「安土に攻め入る」
そうするというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「これよりですな」
「前右府様と秋田介殿のご遺体を探し」
「そうして」
「都じゃ」
そこだというのだ。
「そこから安土じゃ」
「では御所は」
「あちらは」
「帝にお会いして」
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