第五話 才能? 識見? 運? 必要なのは性格の悪さだ!
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幸運を祈る』
閣下が敬礼を解く。貴賓席に礼をしてから自分の席に戻った。卒業生達も礼を解き席に座った。何となく分かった。閣下が何故軍規に違反するような事をしたのか、そして宇宙艦隊副司令長官になるのを辞退したのか。常に誠実である事、それだったんだ。
帝国暦 487年 5月 27日 オーディン 軍務省尚書室 エーレンベルク元帥
「では次のイゼルローン要塞司令官はグライフス大将、駐留艦隊司令官はメルカッツ大将で宜しいな」
私が問い掛けるとシュタインホフ元帥、ミュッケンベルガー元帥が頷いた。
「シュトックハウゼン大将とゼークト大将は上級大将に昇進させ軍事参議官にする」
二人が“問題無い”、“同意する”と言った。
イゼルローン要塞に四年いたのだ。オーディンの状況など何も分かるまい、最低でも半年は軍事参議官においておく必要が有るだろう。いずれ二人には時期を見て新たな仕事を与える。今の所軍務次官、統帥本部次長が有力だが確定ではない。二人の適性を見極めその時の状況に応じて決める事になるだろう。
「ローエングラム伯は競争相手が現れたとでも思うかな?」
「それは有るまい、統帥本部総長。自信家だからな」
「しかし司令長官、此度の事ではその自信とやらも大分損なわれたのではないか?」
「大分というのは同意しかねる。多少というなら同意するが」
私が噴き出すとシュタインホフ、ミュッケンベルガー両元帥が顔を見合わせて笑い出した。最近はシュタインホフ元帥との関係もかなり良くなった。
ローエングラム伯はオーディンへ帰還の途に有る。六月の半ばにはオーディンに戻るだろう。伯はイゼルローン要塞攻略に失敗した反乱軍を追ったが危うくその反乱軍に包囲されかけた。ローエングラム伯を救ったのはゼークト提督率いる駐留艦隊だ。損害は殆ど無かったが屈辱には違いない。イゼルローン要塞をヴァレンシュタインが救った事も有る。二重に屈辱だろう。その事を言うと二人はもっともだという様に頷いた。
「卒業式での式辞の内容を知れば当てつけかと怒り狂うだろう。そうは思われぬか、軍務尚書、司令長官」
「怒り狂っても如何にもならぬよ、統帥本部総長。あの式辞は厳しさと慈愛に溢れた式辞だと陛下がお褒めになられたものだ。如何にもならぬ」
ミュッケンベルガー元帥の言う通りだ。如何にもならぬ。実際あの件での苦情は何処からも無い。
校長式辞の後は軍務尚書訓示だった。事前に訓示は用意してあったがあの式辞の後では如何して良いのか正直判断がつかなかった。だが戸惑う私を陛下が呼び寄せ“良い式辞であった。厳しさと慈愛に溢れておる。卒業生達は良い軍人になるであろう”と仰られた。それで決まった。卒業生達に“厳しさと慈愛に溢れた式辞であると陛下の仰せである
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