第五話 才能? 識見? 運? 必要なのは性格の悪さだ!
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官が誕生する事になる』
大講堂がざわめいた。少し興奮している。
「十年か、年に一度の割合で昇進すれば可能かな」
「言うのは簡単だけど実際には難しいよ」
僕もそう思う。多分同じ事を卒業生も話しているだろう。
『十年後に起きる事をもう一つ予測しよう。両隣りを見なさい』
卒業生達が左右を見ている。何だろう?
『自分自身を含めて三人の中の一人は戦死している可能性が有る。少尉任官後、十年後の生存率は七十パーセントを超えるが八十パーセントには満たない。これまでの統計がそれを示している』
大講堂がざわめいた。貴賓席もざわめいている。軍務尚書が“ヴァレンシュタイン!”と校長閣下を叱責したけど校長閣下は右手を上げただけだった。ざわめきが静まった。
『諸君らは士官学校に入った時点で下士官待遇の軍人になった。この四年間に戦死者は一人もいない。白兵戦技で敗れても射撃でミスをしても諸君が死ぬ事は無かった。シミュレーションで艦隊が全滅しても諸君が死ぬ事は無かったし兵が死ぬ事も無かった。犠牲は無かったのだ。しかし今日からは違う。ほんの小さなミス、些細な誤認が諸君をヴァルハラへと誘うだろう。諸君の部下達も、場合によっては友軍もだ。膨大な犠牲が発生する。その事を忘れてはならない』
誰かがゴクッと喉を鳴らした。皆顔が強張っている
『現在帝国は有利に戦いを進めている。その事は諸君も知る事実だ。しかし同時に長年の戦争により帝国臣民が疲弊している、その事に不満を抱いているという目を背けがちな現実が有る事も認識しなければならない。即ち成人男子の減少、戦費の増大による増税等である』
薄々は気付いていたけど……。良いのかな、そんな事言っちゃって。皆も心配そうにしている。
『今回行われる捕虜交換もそれを考慮しての事だ。少しでも帝国臣民の負担を軽減し不満を解消しようとしての事、それを理解して欲しい。帝国に余力は無い。つまり諸君らに武勲欲しさの無駄な戦いをさせるような余裕は無いのだ。その事を肝に銘ぜよ』
そうだったんだ、校長閣下はそんな事を考えていたんだ。僕は何も知らなかった。ただ捕虜が帰って来るって事を単純に喜んでいただけだった。
『帝国が諸君に望む事、当然だがそれは勝つ事だ。勝つ事が難しいのであれば躊躇わずに退く勇気を持つ事である。そして諸君は士官である以上一人でも多くの部下達を生きて帝国に連れ帰る義務が有る。そこには野心や虚飾は必要ない、常に誠実である事だけが要求される』
校長閣下が大講堂を見回した。
『常に誠実であれ。野心、虚飾、名声、富、権威、権力に惑わされる事無く誠実であれ。それこそが諸君をして帝国軍人の模範たり得る背骨となるだろう』
閣下が敬礼をした。卒業生達が慌てて立ち上がって答礼している。
『諸君の
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