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戦国異伝
第二百三十四話 燃え落ちる寺その八

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「一つな」
「その策はというと」
「御主達、頼むぞ」
 幸村は十勇士達に言った。
「この場は」
「はい、我等全員」
「一気にここで、です」
「渾身の術を使い」
「それを遁の術にしましょうぞ」
 五遁のその術にというのだ。
「これより」
「ではな」
 幸村は両手に一本ずつ持っている十字槍を縦横無尽に振るって敵を倒し続けている。その中でだった。
 彼と共に戦う十勇士はだ、その全身に力を込め。
 火に木の葉、地鳴りに水紫吹に突風に幻と様々なものを出した。それは本能寺とその周りにいる全ての者達を包んだ。
「むっ、これは」
「火か!?」
「地鳴り!?」
「木の葉も舞っておるぞ」
「風も来た」
「これは何じゃ」
「一体」
「敵が増えたか!?」
 幻にも惑わされるのだった。
「馬鹿な、そんな筈がない」
「それに霧も深くなってきてないか」
「どうしたのじゃ」
「一体何が起こったのじゃ」
 皆首を傾げさせている、しかし。
 その中においてだ、幸村達は。
 一気に駆けて本能寺を後にした。後ろで轟音がして本能寺が派手に爆発し焼ける音がした。幸村達はその音を後ろに聞きながら。
 かなり遠くまで逃げていた、そしてだった。
 その場においてだ、幸村は兼続の姿を認めて。
 次に十勇士達を見てだ、微笑んで言った。
「皆おるな」
「はい、この通り」
「皆無事です」
「渾身の術を使ったので疲れていますが」
「それでも」
ご苦労だった、もう殿も蘭丸殿も逃げられた」
 幸村は笑って言った。
「ならばな」
「はい、後はですな」
「これより安土までですな」
「落ち延びるだけ」
「それだけですな」
「そうじゃ、しかし気懸りは御所じゃ」
 幸村はこの場所のことに言及した。
「一体どうなるか」
「確かに。御所は」
「殿が兵を配しておられますが」
 当然御所を守る為だ。
「あちらはですな」
「どうなるかですな」
「うむ、攻められては厄介じゃな」
「そのことは心配無用でござる」
 御所と朝廷のことを気にかける幸村達にだ、兼続が言って来た。
「既に上様が手配をされていてです」
「御所のことにも」
「帝は都から出られてです」
 そしてというのだ。
「大坂に向かわれています」
「大坂城に」
「主な公卿の方々と共に」
 そうなっているというのだ。
「今は大坂に向かう船の中です」
「そうか、流石じゃな」
 幸村はここでまた言った。
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