第四話 頼まれると嫌とは言えないよね
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いた。唯一の救いはその非好意的な感情が我々に向けられたものではない事だろう。
「それで卿らはどう思うのだ」
リヒテンラーデ侯が私、シュタインホフ元帥、ミュッケンベルガー元帥を見た。
「捕虜が戻ってくるとなれば軍としては大いに助かります。新兵を一人前にするのは容易ではありません」
私が答えるとあとの二人が頷いた。軍務尚書というのは不利だ。どうしてもこういう時は返事をする立場になる。輪番制にしてみるか。
「閣下は如何お考えですか?」
考え込んでいるリヒテンラーデ侯に思い切って問い掛けるとまたジロリと睨まれた。
「悪い案ではないな。政府としても何らかの形で平民達の不満を解消したいと考えていたところだ。捕虜が還ってくるとなれば平民達も喜ぼう。一石二鳥、悪い案ではない」
悪い案ではない、二度繰り返した。だが表情は緩まない。
「しかし政府主導というのが気に入らぬ」
やはりそこか。帝国は自由惑星同盟を国家として認めていない。政府主導で捕虜交換を進めれば政府が自由惑星同盟を国家として認める事に繋がるのではないか、貴族達に非難されるのではないかと懸念している。侯が三度我々をジロリと睨んだ。
「軍主導ではいかぬのか?」
「政府主導の方が効果は有ります。国家的行事として大体的に行った方が平民達も喜びましょう。ヴァレンシュタインもそう言っております」
「……」
面白くなさそうな表情だ。しかし軍には軍の懸念が有る。交渉すれば軍だとて反乱軍を対等に扱った等と非難されかねない。後々あれは軍が勝手にやった事などと言われては堪らぬ。もう一押しするか。
「それに軍主導となればローエングラム伯が張り切るでしょうな」
「……捕虜交換を機に平民達の心を掴もうとする、そういう事だな」
「はい。点数を稼がせる事は有りますまい」
「それもあれが言っているのか?」
「いえ、これは小官達の意見です」
シュタインホフ元帥、ミュッケンベルガー元帥が頷いた。リヒテンラーデ侯の渋面が益々酷くなった。
「良かろう、捕虜交換は政府主導で行う。但し軍からの起案によりだ。それをもって陛下の御許しを得る」
「分かりました、早急に起案書を出させて頂きます」
つまり責任は折半という事か。まあ悪くないな。シューマッハに起案書を書かせるか。
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