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真田十勇士
巻ノ二十三 箱根八里その三
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「酒もあるしのう」
「そして蜜柑もか」
 由利がこの果物を出した。
「伊予といえば」
「よく知っておるな」
「話は聞いておる、では伊予に来たならばな」
「蜜柑もじゃな」
「食うとしよう」
「しかし。御主は確かに猿じゃな」 
 望月は猿飛が一行の中でとりわけすいすいとだ、箱根を進んでいるのを見て言った。
「山に強いわ」
「山暮らしの猿だからのう」
「それでか」
「そうじゃ、こうした場所もじゃ」
「苦労せずに進めるか」
「この通りな」
「ふむ。その足ならばな」
 霧隠は冷静にだ、猿飛の動きを見つつ述べた。
「天下の何処でもすぐに苦労なく行けるな」
「その自信はある」
「やはりそうか」
「ただ。山は得意でもじゃ」
 ここでだ、猿飛はこんなことも言った。
「山暮らしだからのう」
「木登りもじゃな」
「猿じゃからな」
 笑ってまた言った猿飛だった、今度は自分からだ。
「それも得意じゃ」
「そうじゃな、生粋の山育ち故にじゃな」
「しかも泳げる、わしに山で負けることはないぞ」
「おっと、それを言うならわしもじゃ」
 由利はその猿飛に笑って言った。
「わしも山では負けぬぞ」
「そういえば御主もな」
「そうじゃ、山暮らしが長かったからな」
「信濃の山でだったな」
「鎖鎌に風の術だけではないからな」
「山を進み木に登ることもか」
「自信があるからな」 
 生粋の山育ちの猿飛に負けない位だというのだ、由利は猿飛に不敵な笑みを浮かべてそのうえで言うのだた。
「負けぬぞ」
「では勝負するか」
「望むところじゃ」
「待て、山ならわしも自信があるぞ」
「わしも山には強いわ」
 海野と清海もだった、二人に言って来た。
「山で修行しておったからな」
「山に篭っておった時も長いからのう」
「御主達にも負けんぞ」
「素手で熊を返り討ちにしたこともあるからな」
「何っ、では勝負をするか」
「今ここでな」
「待て、ここでどう勝負をするのじゃ」
 こう言ってだ、霧隠は四人をやれやれといった顔で止めた。
「先に先に進んではぐれるつもりか」
「はぐれるのは前提か」
「特に御主はな」
 猿飛にもだ、霧隠は言った。
「何かとおっちょこちょいだからな」
「わしはそんなにおっちゃこちょいか」
「相当にな、軽率な真似はするな」
「ううむ、だからか」
「そうじゃ、それにここもまた獣が多い」 
 周りを見回してだ、霧隠はこうも言った。
「狼や熊が殿を襲ったらどうする」
「そうじゃな、殿をお守りせねばな」
「ここは離れるな」
 幸村の傍からというのだ。
「よいな」
「うむ、それならな」
「御主達もじゃ」
 霧隠は由利達に顔を向けて彼等にも言った。
「そうそう軽率な真似はするでない
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