第三話 監視? 護衛? 鬱陶しいのは変わらない
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ろ」
『分かった、難しいがやってみよう』
「それと領収書を忘れるな、自腹になるぞ」
『了解』
帝国暦487年 4月 24日 オーディン 新無憂宮 エーレンベルク元帥
南苑に有るこの部屋はいかにも密談向きの部屋だ。陰鬱で微かに黴臭く薄暗い、そして空気が重苦しい。ここでの会話が弾んだ事はない。必要な事を話しそそくさと帰る、そんな気分にさせる。
「待たせたか、帝国軍三長官が内密で会いたいとの事だが何用かな」
部屋に入ってきた国務尚書リヒテンラーデ侯の機嫌は必ずしも良くはなかった。執務を中断された事への不快感が有るのかもしれない。
シュタインホフ、ミュッケンベルガー両元帥は無言だ。帝国軍三長官筆頭の私から話せという事だろう。
「イゼルローン要塞に反乱軍が押し寄せました」
リヒテンラーデ侯が微かに眉を上げた。
「それで」
「反乱軍は要塞内に兵を送り込もうとしたようです」
シンとした。リヒテンラーデ侯がじっと私を見ている。部屋の空気が一段と重くなったような気がした。
「防いだのだな」
押し殺すような低い声だ。
「はい。要塞内に入ったところで取り押さえました。作戦の失敗により反乱軍は撤退しています」
こちらの声も同じように低くなった。
「レポートの通りか」
「はい」
「フェザーンからは反乱軍の動きを知らせてこなかったな……」
「それもレポートの通りです」
リヒテンラーデ侯が大きく息を吐いた。緊張が緩んだ。
「危ないところでした、あのレポートが無ければ……」
「イゼルローン要塞は落とされていたか」
シュタインホフ元帥の言葉の後をリヒテンラーデ侯が補った。
「ローエングラム伯の事も有ります。最悪の場合、敵に占領された要塞に何も知らずに近付く事になりました。大変な損害を受けたでしょう」
ミュッケンベルガー元帥が最悪の想定をするとリヒテンラーデ侯はフンと鼻を鳴らした。ローエングラム伯など如何でも良い、そんな感情が滲み出ている。反乱軍がイゼルローン要塞を攻略しようとした事は要塞間近に迫っていたローエングラム伯にも伝えられた。ローエングラム伯は今反乱軍を追っている。逸っている事だろう。
「ヴァレンシュタインとは話したのか、軍務尚書」
「はい、……あらあらと言っておりましたな」
「あらあら? 何だそれは?」
不機嫌そうな声だ。顔を顰めている。
「本人にとっても予想外だったようです。実行するにしてももう少し後だろうと思っていたとか」
またリヒテンラーデ侯がフンと鼻を鳴らした。
「良くない状況です。我々が思っている以上に反乱軍は追い詰められているのかもしれません。その事はフェザーンが今回の一件を知らせてこなかった事からも判
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