第二話 奴は正気じゃない、首輪を付けろ
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うにすぎぬ。今後科学技術が発展すれば解消されるだろうという事だ」
「……」
「つまり今は不可能でも十年後、二十年後、いや、一年後には可能となるかもしれぬ」
二人がげっそりとした様な表情を見せた。駄目だな、二人とも衝撃が大きくて立ち直れずにいる。まあ無理もないか、私とて二人に相談するまでレポートを受け取ってから三日かかっている。
「如何かな、防ぐ方法だが」
「……分からぬとしか言いようがないな。……ヴァレンシュタインは何と? この案を考えたのだ、防ぐ方法も考えたのではないか? 軍務尚書は聞いておらぬのか?」
「制宙権が有れば可能だと言っているな、司令長官」
「制宙権……」
シュタインホフ元帥が呟いた。訝しそうな表情だ。
「要塞を移動させるためには要塞の重心を中心として左右対称に複数のエンジンを取り付けなければならん。そうでなければ推力に不整合が生じ要塞は真っ直ぐに動かなくなる。つまりそのエンジンの一つを破壊すれば要塞は進路を保てなくなる。駐留艦隊が艦砲の一斉砲撃を行えば破壊出来るだろう」
“なるほど”、“道理だ”と二人が言った。二人とも表情が明るい。次が楽しみだ。
「だが現実には不可能だろうともヴァレンシュタインは言っている」
「……何故だ?」
シュタインホフ元帥の声が掠れている。コーヒーを用意した方が良かったか、そんな事を考えた。埒も無い……。何処か自分が壊れている様な気がした。壊したのは士官学校の校長だな。
「反乱軍が要塞のみを送り込んでくるなど有り得ぬ、そうではないか」
「……」
「おそらく二、三個艦隊は随伴してくる筈だ、となれば駐留艦隊だけでは制宙権は確保出来ぬ、防げぬという事だ、要塞は破壊される。要塞内に待機していた駐留艦隊、そして約五百万の将兵の殆どが失われるだろう」
二人が呻き声を上げた。
「士官学校に送れば少しは大人しくなるかと思ったが……」
「無理だな、シュタインホフ元帥。卿らは知らぬだろうがあの男は既に宇宙艦隊を自分の影響下に置いている」
「どういう事だ、司令長官」
私が問うとミュッケンベルガー元帥が力無く笑った。
「正規艦隊の司令官に選ばれたのはヴァレンシュタインが選んだ男達だった。彼らは実力は有ったが中央に伝手が無かった。その所為で司令部要員、分艦隊司令官の人選に苦労していた……」
「ローエングラム伯に相談しなかったのか? 」
私が問うとミュッケンベルガー元帥が首を横に振った。
「伯自身艦隊編成で悩んでいた。到底力にはなれぬ」
「それで如何したのだ?」
「決まっているだろう、統帥本部総長。彼らはヴァレンシュタインに相談した。あっという間に艦隊編成は終了したよ。今は訓練中だ。まあローエングラム伯も刺激されたのか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ