第二話 奴は正気じゃない、首輪を付けろ
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ツァーベルじゃないかな、それは。ツィーグラーなら戦略戦術の一般原則についての論考が有名だよ。君が捜しているのはどちらかな?」
「あ、済みません、ツァーベルです。ツァーベルの戦略の分析要約を探しています。勘違いしました」
慌てて答えたら間違えてた。凄いや、分かっちゃうんだ。校長閣下が頷いている。
良かったよ、著者を間違えるなんて怒られるかと思ったけど閣下は何も言わなかった。外見は穏やかで優しそうだ、性格も優しいのかな。そう言えば声も柔らかい感じだった。でもこの人幾つもの戦場で武勲を挙げているんだよな。それに本当なら宇宙艦隊副司令長官だったのに軍規を乱すからと言って断っちゃった。士官学校の校長って閑職だけど不満ないのかな? うーん、そんな風には見えないな。外柔内剛って言われているけど本当にそんな感じだ。
「閣下は何をお探しですか?」
「孫子を探している。久し振りに読みたくなってね」
「孫子ですか……」
珍しい本を読むんだな。
「意外かな?」
「あ、いえ、その」
如何答えて良いか分からずあたふたすると閣下は軽く笑い声を上げた。なんか楽しそうだ。
「教官達は孫子を使わないからね、興味が無いか」
そう、教官達は授業で孫子を使わない。だから僕達も孫子という軍事理論書が有る事、かなり古い時代に書かれた本である事は知っているけど読んだ事は無い。
「良い本なのだけどね」
「そうなのですか?」
校長閣下が頷いた。
「戦争の事だけでは無く国家運営と戦争の関係を重視している。視野の広い軍人を育てるには適した本だと思う」
へー、凄いな。孫子ってそんな本なんだ。一度読んでみようかな。
帝国暦 487年 2月 27日 オーディン 軍務省尚書室 エーレンベルク元帥
「内密に話したいとの事だったがTV電話ではいかぬのかな?」
「他聞を憚る内容なのだ。TV電話では話せぬ。ミュッケンベルガー元帥が来るまで座って待ってくれ」
尚書室に入るなり文句を言ったシュタインホフ元帥をソファーに座らせた。まったく、そう露骨に不機嫌な顔をする事も有るまい。もっともこれから話す内容を知れば顔が歪むだろう。その時は思いっ切り腹の中で笑って……、笑えるわけがないな、溜息が出そうだ……。
直ぐにミュッケンベルガー元帥が尚書室に入って来た。“遅くなった、済まぬ”と言ってシュタインホフ元帥の隣に座った。副官に人払いを命じこちらから呼ぶまで誰も入れるなと言って部屋から追い払った。副官がコーヒーを、と言いかけたが要らぬと追い出した。どうせ味わう余裕などないのだ。無用だ。
「ヴァレンシュタインからレポートが届いた。見て貰いたい」
レポートを二人に差し出すと二人が戸惑いを見せた。
「これは
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