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銀河英雄伝説〜其処に有る危機編
第一話 世は全て事も無し
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ホフ元帥が腕組みを解いた。
「已むを得ぬな。ヴァレンシュタインの大将昇進、宇宙艦隊副司令長官就任の人事は白紙に戻さねばなるまい」
やはりそうなるか……。シュタインホフ元帥が来るまでの間、ミュッケンベルガー元帥と二人で話した。白紙に戻さざるを得ないという意見で我々も一致した。という事は……。

「つまりローエングラム伯の宇宙艦隊司令長官も白紙に戻すという事だな、シュタインホフ元帥」
私が確認するとシュタインホフ元帥が“そういう事になるな”と渋い表情で答えミュッケンベルガー元帥が溜息を吐いた。私も溜息を吐きたい気分だ。

ローエングラム伯は不満と屈辱に塗れるだろう。だが我らもザマアミロ等と喜ぶ事はとても出来そうにない。三人の意見が一致したが我々は混乱して右往左往しているのだ、情けない程に……。
「ミュッケンベルガー元帥、やはり卿に司令長官に留まって頂くしかあるまい。その下にローエングラム伯を持ってこよう」
「私も軍務尚書の意見に賛成だ。国務尚書には事情を説明して納得して頂く」
「……已むを得ぬか。気が重い事だ」
ミュッケンベルガー元帥がまた溜息を吐いた。退役を決意したのに現役に留まる事になった。本人にとっては納得し難い部分が有るのだろう。

「後はヴァレンシュタインだな。彼の処遇を如何するかだが……」
シュタインホフ元帥、ミュッケンベルガー元帥、両元帥が顔を顰めた。問題はこちらなのだ、私とミュッケンベルガー元帥の間ではどうにも良い意見が出なかった。陛下からもヴァレンシュタインの処遇については急げと御言葉が有った。ここはシュタインホフ元帥に期待したいところだが……。

「本人は何らかの形で処罰したという事を周囲に明らかにする必要が有ると言っている」
「少将のままでは?」
「それが出来れば苦労はせぬ。ティアマトで戦った将兵達が納得するまい。暴動が起きかねぬ」
何とも面倒な事だ。ティアマトで戦った六百万の将兵を納得させねばならんのだ。ミュッケンベルガー元帥とシュタインホフ元帥の遣り取りを聞いて思った。

「シュタインホフ元帥、ミュッケンベルガー元帥。ヴァレンシュタインの階級は中将に戻しポストで処罰した事を示す、そういう形で収めるほかあるまい。具体的には兵站統括部から転出させる。本人もそれを強く望んでいる」
「しかし軍務尚書、何処に異動させる? ポストと言っても……」
「……」
シュタインホフ元帥が困惑気味に問い掛けてきたが答えを返せない。兵站統括部は決してエリートコースとは言えない部署だ。何処に異動させたら罰を与えた事になるのだ? ミュッケンベルガー元帥に視線を向けた。彼も口を閉じたままだ。

「それにオーディンの外には出せまい」
「うむ、万一の場合は私を助けて貰わねばならん」

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