三話:契約
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「ああ、前払いというのも失礼かもしれないが、私の研究も兼ねて君に救ってもらいたいものもいるしね」
だが、それがどうしたというのだ。
誰か一人でも救えるというのならば地獄への片道切符を喜んで受け取ろう。
彼らの死が意味のあるものとなるというのならば自分の人生など安いものだ。
例え、死後の魂までも縛られ、地獄を歩き続けさせられるのだとしても構いはしない。
切嗣は手を伸ばす。そして―――
「誰でもいい……誰かを―――救わせてくれ…ッ」
「くくく、では、契約は成立だね」
―――ついに悪魔との契約を交わしてしまった。
衛宮切嗣は人ならざる者に縋ってでも己の欲望を満たすことに決めたのだ。
ゾッとするような笑みを浮かべ、スカリエッティは満足そうに頷く。
そして、改めてを呪いの言葉をかける。
「これからの君は強いて言うならば―――世界の守護者というところかね。くくく!」
スカリエッティはそうして、切嗣がこれから辿るであろう地獄を想像して、実に楽しそうに笑うのだった。
空から降り注いでくる雪により町全体が白く染まった海鳴市。
そんな一種の幻想的な景観を一人眺めている女性が居た。
美しく輝く白銀の髪に、雪中でもなお映える白い肌。
それを際立たせるかのように輝くルビーのように紅い瞳。
敬愛すべき主から新たな名前を賜ったリインフォースがそこにいた。
「本当に世界は……美しいな」
今から消えるからだろうか、全ての物が美しく感じられる。
できれば、もっと生きてこの素晴らしいものを愛でていきたいがそれは叶わない。
自分が消えなければ主の命が再び脅かされる。
それだけは防がなければならない。故に今日、自分は消える。
守護騎士達と小さな勇者達に頼んだ時間からは大分早いがそれでも自分が消えることに少しばかりの虚しさが残る。
「消えてしまいたいと思っていた私がそう感じるのも……優しい主はやてのおかげだろうな」
自分を家族として受け入れてくれたはやてにはどれだけ感謝してもしきれない。
その行く末を見守れないのは些か不安ではあるが、周りの者がいるのでそれは杞憂だろう。
そんなことを考えていたところで後ろから足音が聞こえてくる。
随分と早いなと思いながら振り向くとそこには予想だにしていなかった人物がいた為に目を見開く。
「驚いたな……お前まで見送りに来てくれるとはな―――切嗣」
どこか優し気な笑みを向けるリインフォースに対して切嗣は無表情を貫く。
だが、その顔には隠し切れない絶望感と悲しみが宿っていた。
まるでかつての自分のようだと感じたリインフォースが声を掛けようとしたところで切嗣が口を開く。
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