三話:契約
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途切れることなく響いてくる。責められることは良かった。
だが、自分達の死は無意味だったと本人達に言われるのは耐えられるものではなかった。
蹲り、夢だというのに胃の中の物を全て吐き出してしまう。
『君は全てを救えるんだよ』
「僕は…僕は…ッ!」
『だからさ―――助けてよ』
―――私達を助けてよ。
大勢の声が直接、切嗣の脳を揺らす。
助けてくれと、救われるべき人間が自分に懇願する。
何度も命乞いをされてきた。何度もそれを拒んできた。
しかし、これはそのどれとも違った。殺してしまった人間からの願い。
無意味な死に追いやった者達の言葉。糾弾ではない心からの願望。
生きたいのだと、死にたくないのだと、助かりたいのだと叫ぶ。
「僕には……僕には! 助けられない…ッ」
『だからそれは嘘だよね。ほら、あっちの君はまた人を救っているよ』
ただの人殺しである自分には君達は助けられないのだと叫ぶ。
だが、彼らは彼が現実から目を逸らすことを決して許さない。
無理矢理に頭を掴まれ目を向けさせられる。
あちらの自分はまた人を救おうとしていた。
生存者など誰一人として居ないような火事の中を走り回っていた。
自分だったらそんな無駄なことする時間があるのなら誰かを殺す計画を立てている。
しかしながら、彼は目の前の誰かを救う為に走り続けていた。
そして、小さな命を、手を握ることに成功していた。
決して諦めずに走り続け、小さな救いを得ることができたのだ。
『ほら、君は誰かを救うことができたんだよ? だから―――助けてよ』
無意味な犠牲となった者達が切嗣の周りを取り囲む。
決して傷つけることなく、けれども、決して許すことなどなく。
ただ、ただ、無価値な死に救いを求める。
『助けて』
『助けてくれ』
『助けてください』
『タスケテ』
必死に自分を保とうと蹲り、耳を塞いで逃げようとする。
だが、しかし。そんな甘いことは許されない。耳を塞ごうとも亡者の声は心を蝕む。
ちっぽけな自我などでは彼らの声を拒むことも受け止めることもできはしない。
たった一人の人間が背負うには余りにも重すぎる業。
それを衛宮切嗣は知らぬうちに、望まぬうちに背負ってしまっていたのだ。
―――ねえ、私を助けてよ、ケリィ。
「――――――っ!?」
少女の声が心抉り、修復不可能なまでの傷を彼の心に与える。
まるで断末魔のような悲鳴を上げながら切嗣は目を覚ますのだった。
気づけばどこかの研究所らしき場所にいた。
激しい動悸が止まらず、体中から気持ちの悪い汗が噴きだしている。
だが、そのことに気づかない程
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