1部分:第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
第一章
女と友情
井出由紀子と石黒幸枝の二人は親友同志だ。
幼稚園ではじめて同じクラスになってそれからずっと一緒だ。高校も一緒でしかも同じクラスだった。
「二人共仲いいね」
「本当にね」
クラスメイト達も半分呆れる程仲がいい。女同士であるが怪しい仲にも見える程だ。
だが容姿は正反対だ。由紀子は背が高く髪は茶色がかっていて少し日に焼けている。顔はいつもにこにこしていてジャッキー=チェンに見えなくもない。そんな顔だ。
幸枝は小柄で色が白い。髪は三つ編みにしていて優しげで少し垂れた目をしている。そんな正反対の外見だがそれでも仲がいいのだ。
その二人が同じ制服でいる。しかもいつもだ。
「ねえ由紀子」
「何?」
「最近ピッチング波が乗ってない?」
こう彼女に言うのだった。
「どうなの。最近」
「そうね。最近確かに調子がいいわ」
にこりと笑って幸枝の言葉に応える。学校の帰り道で。
「それもかなりね」
「そうよね。何かあったの?」
「ちょっとトレーニングの方法変えてみたの」
こう幸枝に答えた。
「少しね」
「っていうとどういう調整方法なの?」
「ピッチング練習減らしたの」
そうだというのだ。
「それでその分ランニングとかに向けてるの」
「そういうふうにしたのね」
「ええ。それがかえってよかったみたい」
にこりと笑って述べた。
「今までピッチング練習もかなりしてきたから」
「そうね。私から見てもあれはやり過ぎだったわ」
幸枝は由紀子を見上げながら言った。
「あそこまでやったらかえって身体に負担がかかるから」
「それでそれよりも走るようにしたの」
「それでいいと思うわ」
幸枝もそれに賛成した。
「やっぱりね。足腰が一番大事だから」
「ええ」
「特にピッチャーは」
こう由紀子に話す。
「大事になるからね」
「そうよね。そう思って私もね」
「そういうふうにシフトしたのね」
「ええ。それでいいわよね」
あらためて幸枝に問う。
「トレーニングの方法は」
「いいと思うわ。今言ってることだけれどね」
「有り難う」
「私もね。最近色々考えてるのよ」
今度は幸枝が言う番であった。
「ほら、私ショートじゃない」
「ええ」
実は同じソフトボール部の二人なのだった。由紀子がピッチャーで幸枝がショートという違いはあっても。同じソフトボール部なのである。
「ショートってフットワークが大事だから」
「どうしてるの?」
「最近家で反復横跳びとか縄跳びしてるのよ」
練習するのはそれであった。
「動きがよくなるようにってね」
「そうなの」
「どうかしら」
そのことを由紀子に尋ねる。
「それで。いいと思う?」
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ