7部分:第七章
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第七章
少し時間があるとそっと何かを手渡したり気遣う声をかけたりする。それは確かに事故に遭うまでの彼女とは別だった。それは母も見て言うのだった。
「全く一体全体どうしたのかしらね」
「何が?」
今二人は病院に通っていた。走られるようになってからも一応検診は受けていた。かなりの怪我だったのは確かだったしそのチェックの為にだ。
その白い病院の中を進みながらそのうえで話していた。二人並んで。
「あんたがよ。気遣いしたり優しくしたり」
「私は別に」
「別にでそこまで変わるわけないでしょ?」
娘に顔を向けての言葉だった。
「そうでしょ?人間きっかけがないと変わらないんだから」
「きっかけがね」
「やっぱりあれ?」
そして今度は思いあたるふしを述べる母だった。
「あの看護士さんと会ってから」
「蘭流さんね」
「そう、あの人よ」
言うまでもなくリハビリの時に一緒にいてくれたあの看護士のことである。
「あの人に影響されたの?」
「そうかもね」
実生はその言葉に対して頷いた。
「ひょっとしたら」
「だとしたら立派な看護士さんね」
母は実生の話を聞いて心から思ったのだった。
「実生をそこまで変えたんだから」
「何か随分な言い方ね」
「そう言われるのも当然でしょ?」
しかし母の言葉は手厳しいままだった。
「だって今までのあんたって」
「そんなことはどうでもいいって思ってたのよ」
気の強さは相変わらずだったがそれでも変わるべきものは変わっていた。
「けれどね。自然に教えてもらったのかしら」
「自然に?」
「ええ。自然にね」
こう母に対して語る。話をするその間も病院の中を進んでいく。その途中多くのお医者さんや他の看護士さん、それに患者の人達と擦れ違っている。
「教えてもらったのよ」
「自然に教えてもらうものなの?」
「そうみたい」
そうしてまた言うのだった。
「それはね。自然にね」
「私ずっと一緒だったじゃない」
そして今度はこうしたことを話してきた。
「リハビリの間ね。ずっと一緒だったじゃない」
「そうだったわね。あの看護士さんと」
「だからその時に教えてもらったんだと思う」
これが実生の見ているところだった。
「気遣いとか思いやりとか。そういうのをね」
「自然にねえ」
「ええ。看護士さんは何も言わなかったのよ」
それは確かにその通りだった。蘭流は確かに何も言わなかった。ただ彼女の側に立っていてジュースやタオルを差し出してくれた。怒ることも窘めることもなくフォローをするだけだった。しかしそんな中で彼女をしっかりとコントロールしていたのである。それだった。
「けれど。それだけじゃなくて」
「そうみたいね。あんたの顔にもそれは出てるわ」
「私の顔に
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