参ノ巻
抹の恋?
2
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、側に居ても高彬に危害は及ばない。
そうあたしは結論づけていた。そして、そうとわかればいくらでも打つ手はある。
あたしは俯きながら足早に二人に近づいた。いや、二人の距離感がどうしても気になったあたしは、筋肉好きの抹のためにも通り過ぎざまぶつかったフリをして、それを高彬が支えて更に仲良くなってくれれば万々歳ぐらいに思っていた。あたしがバレることもないだろうし、抹のためにもなる。そう、よくあるテだ。
けれど、なんと予想外のことが起こった。手前側にいる抹を高彬の方に押し出そうとしたんだけど、深く引っ張っていた尼頭巾が前触れもナシにずれて、完全に視界を遮ったのだ。
「えっ!?」
「危ないっ!」
ええええええ!?と混乱したあたしは、足元がよろけた。あたしの足は、抹に向かうどころか、縁に直接置かれていた、アツアツの湯飲みの中へと、踵を突っ込んでしまったのだ!
ギャァァァァーーーーーあっつううううう!!
声を出せばバレてしまうかもしれないということは頭の片隅にちゃんとあったらしく、あたしは無言でピョンピョンと跳びはねた。正直に言おう。覆面のように尼頭巾を被り、無言でザッザッザッザと迫ってきた挙げ句勝手に熱湯に足を突っ込み、飛び回るこの時のあたしは、高彬からすれば即座に切り捨てたいぐらい不審者極まりなかったことだろう。
そして、更に最悪なことが起きた。
「危ないっ!」
「きゃああ尼君様!」
「ピィ!」
飛び跳ねながら、あたしはおやつとして置いてあった砂糖羊羹を、見事に踏んでしまったのだ。ズッ…トゥル〜と百点が挙がるほどの見事な滑りを披露しながら、あたしは誰かにぶつかり、そしてその人共々、もみくちゃになりながら勢いよく縁から落ちた!
わああ落ちた!と思った瞬間に、ゴチッ!といやぁ〜な音が近くでも遠くでも聞こえた…。
…えーん、えーん…。
…誰かが泣いている。誰が…。
泣き声が気になってぐるりと周りを見渡す。辺り一面頭の垂れた草の生い茂る枯れ野だ。声の主は見当たらない。たださわさわと静かに風が葉を揺らし、その合間に遠く泣き声が聞こえる。
えーん、えーん…瑠螺蔚さーん…。
「…高彬?」
ふとあたしがそう言うと、その泣き声はぴたりと止んだ。
振り返れば、さっきまではそこに居なかったはずの十歳ぐらいの高彬が、顔中
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