参ノ巻
抹の恋?
2
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い、と高彬の手が伸びて、あたしの両手が包まれる。咄嗟に振り払おうとしたのに、想定外に強い力で引き留められる。不本意ながらも、しっかりと手を握られたまま、高彬の顔が近づく。額にひやりとした体温が触れた。
「諦めて、僕と一緒になりなさい」
『なんっ○×△…ギャーーーーーー!」
恋愛容量を超え錯乱状態になったあたしはとりあえず叫びながら飛び起きた。衾を剥ぎ飛ばす勢いで上半身を起こす。
え…なに、夢、夢!?いや、そうよ、夢には決まってるんだけども!だってあたしも高彬もとっくに小さな子供じゃないし…。
視界に入るのは、白地に黒の縁取りがしてある、どこにでもある襖…と、使い込まれたぼろっちい寝具。間違っても枯れ果てた野っ原なんかじゃないし、あたしの手の平も、年相応に大きい。
とんでもない夢を見ていた気がして、ぜいぜいと肩で息をしながら額に手を当てた。
「!いっ…ッツ…」
と同時に激痛が走り、あたしは縁から落ちたことを思い出した。
あー…そうだった。とんだ大道芸をやっちゃったわよ…。コレ絶対後から惟伎高にからかわれそう。
そういや、あたし誰かを巻き込んで落ちたんだった。抹…じゃないといいな。か弱い抹じゃなくて、高彬でありますようにー…ん?
その時、あたしは隣に何かあるのに気がついた。布…布?あたしが寝てるのと同じような衾がもうひとつ。そしてそこで横になっているのは…げげっ!たったっ高彬!?
あたしは驚きのあまりヒュッと息をのんで止めた。高彬が、寝ているー…音や気配で、起こしてはいけないと咄嗟に思ったからだった。自らの口を押さえる手を頬にずらせば髪に当たる。あたし、尼頭巾、被ってないー…。つまり、高彬が今目を開けばバッチリあたしの顔が見えてしまうということだ。
ただ救いなのは、高彬より先にあたしが目覚めることができたことだった。
あたしはあわあわと手近にあった衾を頭から被り、泥棒宜しく顔の前で結んだ。怪しさ満点の格好だけれど、無防備に顔を晒しているよりは百倍安心できる。そこでようやく少し余裕ができて、隣の高彬をちらりと見た。
静かに、音も無く眠っている高彬…。え、待って、息してるよね?
あまりの静けさに不安になって、でも近づかないで今すぐにでも逃げた方が良いという葛藤があった挙げ句、あたしは動けず岩のように固まった。
いや、いや…でも、ほんのちょっとだけ…。
あたしは音を絶対に!たてないように気をつけながらそーっと、そ〜…っと高彬に近寄った。
人形のように目をつむり口を引
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