参ノ巻
抹の恋?
2
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涙だらけのひどい顔でえぐえぐと立ち尽くしていた。
『あんた、どうしたのよ、また転んだの?ぐずな子』
あたしはいつものように高彬に駆け寄り、ぶつぶつと文句を言いながらも、ぐしゃぐしゃの顔を袖で乱暴に拭ってやった。
『どうしたの?びしょ濡れじゃない。溜め池にでも落ちたの?』
そう言うと、高彬はこくりと頷く。あたしはできるだけ怒った顔をして言った。
『何やってんのよ。危ないことすると、北様がまた悲しむわよ。ただでさえ由良の具合が良くなくて落ち込んでるのに。心配かけたくないでしょう?』
『ごめんなさい…』
高彬は素直に謝る。
『もう、本当に気をつけなさいよ。ほら、兄様の服あるから、うち行くわよ?そのままじゃ帰れないでしょ』
こくりと頷いた高彬の手を引いてあたしは歩き出した。
『今日は、兄様がいないから、せっかくあんたと遊んであげようと思ってたのに。一人でどこ行こうとしてたのよ。あたしがわざわざ…』
「瑠螺蔚さん」
『何よ』
話を遮るように名前を呼ばれて、あたしは振り返った。後ろを歩く高彬は俯いている。濡れ髪がペトリと額に張り付き、見るからに寒そうだ。
『瑠螺蔚さんは、僕のことどう思ってるの?』
『はぁ?』
これはやっぱり寒いんじゃ無いかとそんなことを考えていたあたしは、突然すぎる話の転換について行けず、呆れて言った。
『愚図でドジでとろいヤツ』
きっぱりとそう言っても、高彬は俯いたままだ。
『なんなの、藪から棒に。あたしはねぇ…』
「好きだよ。瑠螺蔚さん。好きなんだ…。本当に、本当に、好きなんだよ…」
『な…っ』
イキナリの告白に、虚を突かれたさしものあたしも赤くなる。
『あ、あんた、バカじゃないの!?』
「愛してる」
『あ、あ、あい…』
言葉が続かない。
「あ、あ、あ、愛してるとか、そっ、そんな簡単に言うもんじゃ無いでしょ!?だ、大体あんた、あたしのどこを見てそんなこと言ってんのよ!」
「全部。優しいところも、情にもろいところも、思い込んだら一直線なところも、全て。それに、簡単になんて、決して。言っていないよ」
『…!』
あまりのことに、あたしは二の句も継げないぐらい顔を赤らめて口をぱくぱくとさせた。
…いや、本当はわかってる。真面目な高彬が、簡単な気持ちで、好きとか愛してるとか言う人じゃ無いってことは。そう、あたし
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