三話 人里
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「妖…か」
狂夜は大きな本を閉じ、繰り返すように呟く。
入っていた店の外に出て空を仰ぐ。
晴天、新しい世界を迎え、この気候はかなりいい。
多くの人が行き交うのどかな場所、人里と呼ばれている
道を行く人の殆どが和風としか形容しがたい着物を着ている。
そんな所に黒コート黒いズボンの黒で統一された服の男が居たら、当然目立つであろう。
その男の隣を歩いている少女は金髪に紫色の着物と言った、これまた注目を集める材料である。
狂夜は向けられる視線を痛く感じながら歩く。
紫が突然止まり、言った
「あの狂夜さんってお金持ってないですよね?」
「あぁ」
「これからどうするんですか?」
狂夜が返答を返そうとするが狂夜が前方に釘付けになる。
突然、前方から右手にナイフを持ち、左で風呂敷のような物をかかえている見るからに怪しい男が狂夜の前を走っている。
「退け!!道をあけろ!!」
男は止まる気はないらしく、ナイフを前に向け全力疾走する。
狂夜はしゃがみ込み、
その状態から勢いよく飛び上がり、宙返りをしながら相手を蹴り上げた。
通称『サマーソルトキック』が男の顎に入るとたまらず気絶した。
男は倒れこみ、直ぐに人里の人が集まってきて、泥棒はお縄にかかった。
狂夜の元に1人の女性が息を切らしながら走ってきた。
その女性は狂夜の前で止まったかと思うと狂夜の手を握って言った。
「あぁ!ありがとうございます!なんと感謝したらいいか…あぁ!少ないですが、これはほんのお礼です」
女性は無理矢理と言うように狂夜の手の中に封筒をねじ込む。
「あ、いや、俺は…」
「どうぞ、受け取ってください。私の気が収まりません。」
女性は最後に狂夜に深く頭を下げて泥棒の方へ行った。
狂夜は頬をぽりぽりと掻き、封筒を確認する。
そこにはここのお金で50000円分と言った大金が入っていた。
「奇跡…ですね」
「あぁ、うん」
狂夜はさらに強くなった視線を感じ堪らずその場から動いた。
周りを見渡し、団子屋が目に止まった。
「紫ちゃん、ちょっと、そこの団子屋行ってみない?」
「はい」
狂夜は人目を気にしながら団子屋の中の席に座り、注文を取りに来た団子屋の店員にそそくさと要望の品物を言った。
注文を取った店員が厨房へと行くのを見送り、
紫が話しにくそうに狂夜の方を向き、小さな声で質問する。
「狂夜さんは、外の世界から来たんですよね?」
「うん、そうだよ」
「前の世界での話を聞かせてくれませんか?」
瞬間狂夜の動揺が見えた。
「…狂夜さん…?」
紫が心配そうに狂夜の顔を見る。
狂夜は「はっ」と我に帰り無理矢理笑顔を作る。
「お待たせしましたー」
狂夜にとってはいいタイ
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