第八話 いい夢を見させてくれ……
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
試合は進み……。
「ちょっと、昔話をしていいか?」
八回裏。星秀学園の攻撃。
9点リード。打順は8番から。
ベンチに座って試合を眺めていると。隣に座る赤石が声をかけてきた。
「あん?」
「俺が小5の春までリトルリーグにいたのは知ってるよな?」
「ああ」
「その当時、俺が所属していたリトルリーグのチームの二番手投手……正確には俺が入るまでエースを務めていた男が黒石裕也だったんだ。
俺と裕也はお互いが認め合う良きライバルだった。
あの日までは……」
赤石の話によると、俺が初めて草野球の試合をした一月ほど前。
リトルリーグの大会に出るメンバーが発表されたらしい。
赤石と黒石はお互いが認め合う良きライバル。
小学生ながら、100キロ超えのストレートを投げる赤石と。
左投手で、速球派の黒石。
エースナンバーを巡って、監督にアピールをしていた。
周囲は二人のどちらがチームのエースにふさわしいか、二つの派閥に別れていた。
そして、そこでソレは起きた。
赤石による黒石への暴行事件。
結果、赤石はチームから去り。
そして、中学から捕手として野球を始める。
第三者的にみると、エースに選ばれなかった赤石がライバルだった黒石に嫉妬して襲いかかった子供の喧嘩となる。
しかし、実態は違う。
赤石は、知ってしまったのだ。
良きライバルだと思っていた黒石が、裏で自分より実力のないチームメイトをいじめているということを。
当時、俺の学校でガキ大将的な存在だった赤石は黒石と二人で話した。
弱いものイジメを辞めさせる為に。
だけど黒石はそこで言った。
「お前の学校にいる月島若葉を紹介しろよ。そしたら辞めてやるよ」と。
自分の事なら何を言われても我慢できた赤石だが、若葉のことは我慢できなかった。
そして、その日。
練習中に、ソレは起きた。
赤石の暴力事件。
結果、赤石はリトルリーグのチームを去り。
黒石はそのままチームに残った。
「ガキだったんだよ。当時の俺は」
「ま、赤石が本気で怒るのは大抵若葉のことだったからな」
「大好きな野球。それも、自分と同じくらいの力を持つ選手。
そんな選手と共に野球をやれることに当時の俺は夢中だった。
月島……若葉のことを除けばな」
『赤石君たちもチームに入れてもらえばいいのに』
「本当なら、俺は野球をやる気はなかったんだ。
きっと、月島にあんなことを言われなければ俺は野球は辞めていた。
きっと、しょうもない学生生活を無意味に送る……そんな人生を歩んでいた」
「……なあ、赤石」
「?」
「夏は……好きか?」
「ああ。
あんなことがなければ、もっと好きだったよ」
「なあ、赤石」
「あん?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ