精神の奥底
53 朝の到来
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いつも相当な変わり種ですが…ブルース、資料を」
『ハイ、炎山サマ』
炎山は自身のナビのブルースに命じて、資料をロードさせる。
『ブルース!久し振りだね!』
『あぁ、ロックマン。残念だが、今回はお前とネットバトルしている時間は無さそうだ』
『うん…本当にごめんね、こんなことに巻き込まれちゃって』
『気にするな。無実の一般市民が巻き込まれているとなれば、助けるのは我々の当然の使命だ』
「WAXAの分析官の女で高いクラッキング技術を持っています。こいつにローカルネットで木場の端末に侵入してもらい、悪事の証拠を抜き取ってもらう」
「うまくいくといいが」
「最善を尽くします」
「そういえば、ニホンに来たのはいつ以来なんだい?」
「最後に来たのは電脳獣事件の時ですから、半年ぶりでしょうか。光や桜井の卒業式の後に顔を少し合わせたのが最後で」
「会社の方は?」
「アメロッパのI.P.Cエンタープライズの副社長から社長に昇格しました。ニホン法人の方は昨今のニホン経済の不況から、経営不振でしたが、株式を公開して何とか乗り切ったようです」
「…そうか、もうニホン法人は」
「もう経営者も株主も総変わりし、伊集院の人間は実質的に経営に関わっておらず、あくまでI.P.Cグループの一部でしかありません。しかし会社はその一族のものというわけではなく、多くの人の力によって支えられているということを考えば、当然の流れだったんだと思います」
炎山はいつもなら見せないような、寂しそうな顔をしていた。
I.P.Cは炎山の一族がニホンで創立し、かつてはニホンに本社があった。
ニホン法人があったからこそ今の世界有数の大企業としての立場もある。
本社がアメロッパに移り、大企業の御曹司として何不自由無い生活を送ることができている現状でも、やはり自分たちのルーツが自分たちの手を離れて羽ばたいていくのは、子供の成長を見てきた親としての気持ちのようであり、何処か寂しくなってしまうのだった。
しかしその寂しさを吹き飛ばすように、祐一朗の電話が鳴った。
「ん?誰だろう?はい、光」
『おじさん。私、メイルです』
「メイルちゃん?」
「桜井…?」
電話の主は秋原町の家の隣に住んでいる熱斗の幼なじみの桜井メイルだった。
声には誰が聞いてもすぐに不安を覚えているのが分かった。
炎山もメイルとは今まで熱斗とともに何度も会ったことがあり面識はあった。
それどころか一度は気になったことのある相手だ。
「どうかしたのかい?」
メイルが直接、祐一朗に連絡をしてくることは珍しい。
PETやパソコンの調子が悪い時の相談ですら、熱斗を通じてしている。
一応、お隣さんとはいえ、息子が昔から仲良くしている程度であまり自身の交流は無いのだ。
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