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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 2
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 あんな戦いはもう、本当に、心の底からご遠慮願いたい。



「っのわ!? なんだあ!?」
「あ、師範」

 男性が驚く声に顔を上げれば。
 発声練習や音階矯正や腹筋・背筋の強化に努めた部屋の扉の向こう。
 廊下側に立っている金色の髪と若葉色の虹彩を持つ恩師と目が合った。

「……フィレスか? ってぇ!? お前、その髪! 俺に黙って切るなよ!」

 声とリアクションは、相変わらず大きい。
 一挙一動がそこらの芸人よりよっぽど大袈裟な気がする、が。
 素早く室内に滑り込んで扉を閉める辺り、周囲への配慮は欠いていない。
 師範はやはり、素晴らしい状況判断能力をお持ちだ。
 しかし。

「毛髪の調整に報告義務がありましたか?」
「お前に限り、ある!」

 いつからそんな取り決めがあったのだろうか?
 学徒時代には聞いてなかったけれど。

「翼もなくなってるし。今度会ったらくすぐってやろうと思ってたのに!」
「やめてください。……今日は私が関わった一連の流れを報告に来ました。この方はマリアさん。肩に乗っているのが、ティーとリースさんです」
「……こんにちは」

 そんなに不審がらないでください、マリアさん。
 マリアさんの服の中に逃げないで、リースさん。
 ティーは「くわあああ〜っ」とあくびを一つ。無関心のようだ。

「ちょっとソレスタ、今何か言っ、あ。お戻りでしたか、フィレスさん」

 この教会に住むもう一人の神父、アーレストさんが廊下から入ってきた。
 普通に迎えてくれるのは嬉しいのだけど。
 突然消えたり現れたりする自分を見て、何故こうも平然としているのか。
 やっぱり不思議な人だ。

「! 彼女は」

 アーレストさんの視線が、マリアさんに固定された。
 金色の目を見開いて……驚いてる?

「はい。こちらはマリアさんで、肩の上に居るのが、ゴールデンドラゴンのティーと精霊のリースさんです。今回の流れの当事者で……って……、え?」

 アーレストさんの頬に、涙が一粒、零れ落ちた。
 マリアさんがびっくりして瞬く。

「失礼しました。何故か、急に懐かしく感じて」

 懐かしい? マリアさんが?

「なんだ。昔の恋人にそっくりとかか?」
「アンタと一緒にしないでちょうだい。私に女性遍歴(へんれき)なんて無いわ!」
「男となら()る、と。」
「一度痛い目を見なきゃ解らないのかしらあ? この、満開中で絶賛見頃なお花畑脳は。あるワケないでしょ!  聖職者を舐めんじゃないわよ!」
「はっはっは! 舐めたくはないなあ〜。不味そうだしい〜」
「ああもう! ああ言えばこう言うっ!」

「……彼らが、貴女の?」

 楽しそうに戯れる二人を指して、マリ
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