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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 2
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が変わる瞬間、彼は笑ってた……気がする。



 実は、玉座の間に居た時からレゾネクトについて考えてた。
 誰に言ってもどうにもならない事だから胸の内に仕舞っておくが……彼はとっくに、勇者の再誕を諦めかけていたのではないか?
 根拠は私との戦闘にある。
 いちいち言葉にしなくても使える筈なのに、わざと聴こえるように発していた単語。
 如何に彼が鏡だとしても……私が彼の力を知りたがってたとしても、自分を攻撃する者に手の内を明かす愚は犯さないだろう。通常なら。
 だが、彼は自分から切っ掛けを作った。気付いてくれとでも言いたげに、何度も言葉にした。
 無意識下では、止めて欲しかった……のかも知れない。でなければ、殺して欲しかったか。
 勇者は戻らない。マリアさんは自分には決して笑わないと、何処かで理解していた。
 だから、自分を止めるなりなんなりして欲しかった。一緒に逝きたかった……とか。
 臆測だ。
 私には他人が隠した思いなんて読み取れないし、彼が言葉にしてたのだって、単に遊んでただけの可能性もある。実際、今思い出しても「よく生きてるよ」と自分を褒めたくなるほどだ。
 うっかり本気で殺意を向けてたら「さよなら霊長類」どころか「さよなら未来」だったんだな……。
 あんな戦いはもう、本当に、心の底からご遠慮願いたい。

 「っのわ!? なんだぁ!?」
 「あ、師範」
 男性が驚く声に顔を上げれば、三日三晩発声練習や音階矯正や腹筋背筋の強化に努めた部屋の扉を開いて廊下側で立っている、金髪に若葉色の虹彩を持つ恩師と目が合った。
 「……フィレスか? お前、その髪! 俺に黙って切るなよ!」
 声は大きいが、素早く室内に滑り込んで扉を閉める辺り、周囲への配慮は欠かしてない。
 師範はやはり素晴らしい状況判断能力をお持ちだ。
 しかし
 「毛髪の調整に報告義務がありましたか?」
 「お前に限り、ある。」
 いつからそんな取り決めがあったのだろうか? 学徒時代には聞いてなかったけれど。
 「翼も無いし。今度会ったら擽ろうと思ってたのに!」
 「止めてください。……今日は、一連の流れを報告に来ました。この方はマリアさん。肩に乗ってるのがティーとリースさんです」
 「……こんにちは」
 そんなに不審がらないでくださいマリアさん。マリアさんの服の中に逃げないでリースさん。ティーは欠伸を一つ。無関心のようだ。
 「今何か言っ……あ。お戻りでしたか、フィレスさん」
 扉を開いて顔を覗かせたアーレストさん。
 普通に迎えてくれるのは嬉しいが……突然消えたり現れたりする自分を見て、何故こうも平然としていられるのか。
 やっぱり不思議な人だ。
 「! 彼女は」
 アーレストさんの視線がマリアさんに固定された。
 ……
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