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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 2
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でも、掴んだら進め。
 そして、自分の足で歩け。
 ですよね、師範。
 「……はい。ありがとうございます」
 アリアの微笑みも、いつかはもっと力強く綺麗に咲くだろう。全ては彼女次第だ。
 「フィレスさん」
 「はい……え?」
 振り向いたら突然、クロスツェルさんに頭を下げられてしまった。
 「貴女にご協力いただけたおかげで、ロザリアと再会できました。ありがとうございます」
 「ああ。いえ、会えて良かったですね」
 「はい」
 上げた顔は、本当に嬉しそうだ。
 うん。此処まで露骨だと私も気分が良い。
 「お幸せに」
 余計なお世話だと分かっていても、こんなに にこにこされてしまえば言いたくもなる。
 クロスツェルさんとアリアは顔を見合わせ……あ。アリアのほうがちょっと困惑気味。
 二人共いろいろ抱えてるし、仕方ないかな。
 しかも、ロザリアさんを追い掛けて来たのは……
 「……って、さっきからベゼドラさんが戻って来ませんね? まさか、異空間に置き去りとかでは」
 きょろきょろと見渡してみるが、やはりあの目立つ黒い容姿は何処にも無い。
 廃墟と化した神殿の中心に居るのは、マリアさんとリースさんとティー、私とクロスツェルさんとアリアだ。
 異空間から出る前に姿を消したのは見ていたが、大丈夫なのか?
 「彼は今、ロザリアが張った結界内に居ます。もう少し落ち着いてくれたら話しに行こうと思っていたのだけど……ずっと草を(むし)っているの」
 「……そうですか」
 私も行ったあの場所かな。
 陽光満ちた穏やかな風が吹く草原で、ひたすら草を毟るベゼドラさんの姿……容易く想像できてしまったのは何故だろう。
 「そろそろ限界だと思うから、行ってきます。……クロスツェルは」
 「此処で待っています。二人にしか通じない話もあるでしょう?」
 「……ええ」
 俯くアリアの頭を撫でるクロスツェルさんの仕草が自然だ。申し訳なさそうに見上げたアリアの表情が、ゆっくりと穏やかになっていく。
 これが世間一般に言われる「良い雰囲気」か。なるほど。
 「では、私達も師範達の教会へ移動します。また何処かでお会いしましょう」
 「はい」
 「また、何処かで」
 二人に一礼すると、同時に頭を下げてくれた。
 しっかりした挨拶は、出逢いも別れも気持ちが良いな。
 零れた笑顔でアリアを見送ってから、マリアさん達に向き直る。
 「お待たせしました」
 「決まったんですね」
 何が、とは聞き返すまでもない。
 「はい。お願いします」
 「……では、行きましょう。リースリンデもしっかり掴まって」
 「はい!」
 ティーとリースさんを肩に乗せたマリアさんと手を繋ぎ、一人神殿に残るクロスツェルさんにもう一度頭を下げた。
 景色
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