暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン -旋律の奏者-
アインクラッド編
74層攻略戦
久方振りの再開を 01
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 「うぐ……。 いや、そう言わずに」
 「キリト君?」
 「シェフ捕獲」

 僕ににじり寄ってくるキリトを制してくれたのは、またもや新しい来客だった。 キリトは僕への懇願を放置して、その新しい来客の手を捕まえる。

 「な……なによ」

 突然のことで驚いたのか(当然だ)、シェフ(仮)は反射的に後ずさる。

 (へえ、ずいぶん珍しいお客さんが……。 ああ、いや、目的は買い物じゃなくてキリトか)

 うんうんと適当に納得した僕は、その隙にキリトから距離を取って、新たな闖入者に視線を投げた。

 美人、と言うのが彼女を表す上で外せない言葉だろう。
 綺麗な栗色の髪。 大きなはしばみ色の瞳。 顔立ちは人形かと見紛うほどに整っていて、スラリと伸びた手足は芸術品と言っても過言ではないとかなんとか。 純白と真紅とに彩られた騎士服は華やかでありながら凛とした印象を与え、その可憐な容姿と相まって密かにファンクラブまであるらしい。
 彼女の名はアスナ。
 SAOで誰もが認める最強ギルド『血盟騎士団』(Knights of the Bloodの頭文字からKoBの通称で呼ばれる)の副団長であり、実質的な攻略責任者だ。
 絶世の美貌に加え、視認さえ困難なその剣技をして『閃光』の異名を持つアスナさんは、当然のようにかなりモテる。 ファンクラブの会員たちはわりと大人しいけど、プレイヤーの中には行き過ぎたストーカーや、逆に目の敵にする人たちもいるらしく、色々な方面からの危険があるそうだ。
 だからなのか、アスナさんには複数の護衛がKoBから派遣されていて、今日もそんな護衛さんたちが店の外に立っていた。 アスナさんの手を握っているキリトのことを警戒しているのか、はたまた羨ましがっているのか、そこまでは分からないけど、とにかくキリトを殺気の篭った目で睨んでいる。

 「珍しいな、アスナ。 こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」

 その視線に気がついたキリトは、アスナさんから手を離しながらそう言った。
 自慢の店をゴミ溜め呼ばわりされたエギルさんは顔を引き攣らせたけど、アスナさんが微笑と共に挨拶するとそれも霧散する。

 と、エギルさんに視線を向けた弾みで僕に気がついたらしい。 アスナさんの目が一瞬で剣呑なものになった。

 「どうしてあなたのような人がここにいるんですか?」

 キリトに向けていたものとは明らかに違う、敵意に満ち満ちた声。
 僕にとっては聞きなれた声だけど、場の空気は一瞬で凍りつき、キリトが沈痛な面持ちで俯いた。

 「さあ、どうしてだろうね。 でもまあ、安心してよ。 もう帰るから」
 「そうですか」
 「じゃあ、エギルさん。 そう言うことだからまたね。 さっきの件はよろしく頼むよ。 キリトも、じゃあね」

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