暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン -旋律の奏者-
アインクラッド編
74層攻略戦
久方振りの再開を 01
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さんの顔を見て、そして固まった。
 言った通り、エギルさんはかなりの強面だ。 悪役レスラー(しかも、かなり強い)みたいな風貌なので、相当に怖いだろう。 まして、くだんのお客さんは気の弱そうな感じだ。

 あーあ、これじゃあ、良いカモだよ……。

 口に出せば営業妨害になりかねないので、あくまで心の中で留める。
 エギルさんは気の良い人だけど、商人である以上、取引に手加減はしない。 気の弱そうな相手からは毟れるだけ毟り取る悪徳商人だ。
 もっとも、毟り取る相手にもエギルさんの線引きがあって、レア装備で身を包んでいるような相手だったり、お金に余裕がありそうな相手だったりからしかそう言うことはしない。 逆に、お金に困っているであろう相手には色をつけてあげたり、中層ゾーンのプレイヤーに対しては採算度外視でサービスしたりもしているので、まるっきり悪徳商人とは言えないだろう。

 ちなみに、今、エギルさんの目の前で縮こまっているプレイヤーは明らかに前者だ。
 メイン武器と思しき両手槍は華奢な造りだけど、細部に精巧な細工が施されていて、見ただけでレア装備だと分かる。 それも、たまたまのドロップ品ではなく、細工職人の手による装飾だ。 僕でも分かると言うことは、エギルさんなら簡単に分かるだろう。
 おまけに両手槍以外にも、装備している防具類にも恐らく同じ職人の手による細工が見られるので、そこそこのお金を持っていることに間違いはなさそうだ。 ボス攻略で見たことはないから、中層ゾーンのプレイヤーなんだろうけど、少なくとも彼はエギルさんにとって毟り取っていいお客さんになる。

 実際、価格交渉をしている2人を見ていると、エギルさんは人の良い笑みを浮かべていた。 付き合いが長いから分かるけど、あれは明らかに毟り取る時の顔だ。
 対する両手槍使いのプレイヤーさんは肩を狭めて小さくなっている。 どうやら、とんでもない安値での買取を言い渡されたらしい。

 ご愁傷様、と心の中で黙祷を捧げた僕は、彼とは違う新しいお客さんとバッチリ目が合った。

 「「あ」」

 完璧にシンクロした声。
 次いで、僕はニコリと笑い、その人物はニヤリと笑う。

 「やっほー、相変わらず黒いね」
 「そう言うそっちは相変わらず女の子みたいだな」

 そう言い合って、僕とキリトは軽く拳を打ち付け合う。

 キリト。
 全身黒系統で固めているこの人と僕は兄弟だ。 キリトが兄で、僕が弟。
 ちなみにキリトも攻略組で、フロアボス攻略戦の時には臨時でパーティーを組んだりもしている。 もっとも、普段のキリトはソロだし、僕は基本的にアマリとのコンビだから、それ以外でパーティーを組むことはあまりない。

 「アマリとは別行動なのか?」
 「今は夢の世界を冒険してる
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