IF 二話:無意識
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嗣は淡々と告げるだけだ。
「お前の家もあるし、じいちゃん達もいるだろ、切嗣!?」
「最初から失敗した場合はアルカンシェルを使うように決めてあった。そのためにわざと管理局に僕達を追わせていた」
どんな犠牲を払おうともこの世界を守れるなら構わない。
それが自分にとって関わりのある人間すべての消滅だとしても。
家族を殺す覚悟をした男が近所の知り合いを殺すことに今更戸惑うはずもない。
何よりも少数を多数の為に犠牲にするという行為は―――
「数万人の命で何十億という命が助かるのなら、それは正しいことだ」
悲しいほどに正しいことなのだと知っているからだ。
クロノとて頭ではそれが正しいのではないかと思っている。
しかしながら、認めることはできない。
「だが、それでは!」
「五人の犠牲で済んだところを下らない意地を張るから新たな犠牲が生み出された。だが、まだ間に合わないわけじゃない。数万人の犠牲で数十億が助かるんだ」
切嗣は自身の正当性を主張するように語っていく。
自分はこれ以上戦闘することはできない。ならば相手をこちらの意見に賛同させるしかない。
故に相手の非を責めつつ、他の手段を提示する。
他に方法はないと思わせるために。
しかしながら、そう簡単に靡く相手ではない。
「最悪の場合はそうなるな。だが、現状で諦めていいはずがない。人の命は数で測っていいものじゃない」
「はっ、そんな綺麗ごとじゃ何一つとして救えはしない。結果的に全てを失うだけだ」
クロノの考えを嘲笑うように鼻を鳴らす切嗣。
しかし、クロノは気分を害した様子もなくジッと切嗣を見る。
その目にはどこか哀れみが込められているようにも見え、逆に切嗣を苛立たせる。
「本当にあなたはそう思っているのか? 綺麗ごとの正義を本当に諦めたのか?」
「諦めるも何もない。お前たちの言う正義では世界は救えない。それが真理だ」
本当に優しい正義で世界が救えるのならばこんな道を歩みはしなかった。
奇跡がこの手に宿るのならば誰もを救う道を選んだはずだ。
だからこそ、あってはならないのだ。奇跡という人々の目を眩ませる幻など。
決してあってはならないのだ。
「必要なのは“最善の悪”。正義も奇跡も存在しない以上はそれ以外に道などない」
最善の悪こそが、この世界では正義となりえる。
そんな狂った世界こそが切嗣にとっての憎悪の根源なのかもしれない。
世界を、正義を、奇跡を、愛したが故にそれらを憎むに至ったどうしようもなく哀れな男。
衛宮切嗣とはそんな存在なのかもしれない。
「……確かに、あなたの言葉は正しいかもしれない。だが、あなたの正義は破綻している」
「なんだと?」
「いくら数
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