第九十二話
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きく手を掲げた。
「はい!」
「そこのピンク色のお姉さん!」
まるで小学校の生徒と先生のように、手を挙げたリズをインプの少女が指を指した。このまま教壇に上がって黒板に書いてある問題を解く勢いだったが、もちろんここは学校の日常の1コマではなく。
「リズさん! 無茶ですよ!」
「そうね……」
あのデスゲームを生き延びたとはいえ、リズ本人のスキル構成は生産系。いや、スキル構成が戦闘よりだったとしても、自分は未熟だと分かっていた。シリカに無茶だと言われるのも分かっており、リズはその問いかけに頷いて隣のリーファの背中を押した。
「だからよろしくリーファ」
「はい!?」
突如として矢面に立たされたリーファは、周囲の観客たちからの拍手も合わせて混乱し、とにかくリズへと詰め寄った。
「リズさん何ですかいきなり!」
「だって、あたしたちの中で一番強いのあんたでしょ? あんたが無理ならみんな無理よ」
「それはそうかも知れないけど! いきなりって……」
「なら、私がやってもいいかな」
口論を始めるリズとリーファに苦笑しながら、今までジッと眺めていたルクスが一歩前に出た。ポカン、とその顔を眺める他三人に対して、ルクスはあくまで静かな笑顔で応えた。
「……あんたが自分から行く、なんて珍しいわね、ルクス」
付き合ってさほど時間が経った訳ではないが。ルクスはあまり自己主張しない方だと思っていたリズは、ルクスの申し出に少し驚いて聞き返す。確かに自分でも珍しいと思うよ――と前置きをしながら、ルクスは剣の素振りをしているインプの少女を眺めて語る。
「あの子がキリト様……さんみたいに強かったから。自分がどれだけ強くなれたか、あの子と戦えば分かる気がするんだ」
「お兄ちゃんと……」
ルクスが語るその言葉に、リーファは少し何かを考え込んだ。そしてインプの少女はこちらが何やら揉めていると思ったのか、それとも単純に待ちくたびれたのか、リズたちに向かって声をかける。
「ねー! 揉めてるなら、ボクは二対一でもいいよー?」
「ああ、もう……じゃ、私とルクスがいくから!」
半ばヤケになったようなリーファが、ルクスの手を引っ張ってインプの少女の前に立つ。多対一のデュエルは厳密にはシステム上無いが、リーファとルクスがそれぞれインプの少女にデュエル申請を送り、それを少女が受託することで可能となる。
「ユ、ウ、キ……」
デュエル申請表に表示された名前を読み上げながら、リーファはまるで聞いたことがない名前だ、と有名なプレイヤーの名前を思い返すも、まるで照合する記憶はない。しかし今までやっていた剣舞は、この海岸に来たプレイヤーたちの多くを魅せるほどのものだった
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