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東方幻潜場
7.『愛情』
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 目を開くと、そこは森の中だった。
 木がいくつも生い茂り、ひどい湿気であちこちにキノコやカビが見られる。
「……なんで僕、ここにいるんだ?」
 頭を掻いたその時。
 殺気を感じた。
「っ!!」
 バッとその場から勢いよく前進すると、何かが空振る音がした。
 妖怪である。
「チッ、逃したか……まぁいい、子供を食えることなんてなかなかねぇからな」
 3mはある狼の妖怪は長く鋭い爪を露わにし、襲いかかる。
「ぐっ……!」
 爪で“殴られ”、木にたたきつけられる。東は痛そうに咳き込んだが、妖怪は不意を突かれたような顔をした。
「む……?貴様、何故俺の爪が刺さらないのだ」
「アイス、魔法……」
 東は両手の掌を妖怪に向けた。
「うぉっ!?なんだこいつ、魔法使えんのかよ」
 妖怪の手足が凍り付いていく。
 やった、と思った。
 しかし妖怪は不敵な笑みをみせて。
「こんな魔法、俺ぐらいの妖怪には効かぬわ」
「なっ……!」
 魔法が無効化され、ぐっと唇を噛みしめた。
「そいやぁ!」
「がっ」
 爪で思いっきり殴られ、再び木に叩きつけられ東は気を失った。
「はぁ、ようやくこれで……。……!」
 気を失ったはずだった。
 東は黄金色の瞳で妖怪を見つめていたのだ。
 それに加え、身長も少し高くなっている。
 そして漂う異質な空気に、妖怪は首を傾げた。
「よくわかんねぇが……もうねんねの時間だぞ、ガキ!」
 勢いよく爪を振りかざした。
 はずだった。
「な……!?」
 爪は東に触れることさえできなかった。
 そこにいるのに。
 いくら攻撃しようが、爪は当たることなく空振りする。
「くそっ、なんだよこいつ!?」
 妖怪がそう叫んだ瞬間。
 東は妖怪の懐に入り込み、ポスッと触れた。
「……?何を……グアッ!?」
 その刹那、妖怪は血肉を散らして四散した。
 東はやがて黄金色の瞳を閉じ、ふらっと木に寄り添って眠った。

 これを、見ていた者がいた。
 東をここまで運んできた張本人、八雲紫である。
 瞳のようなものがちろちろ動く奇妙な空間で、紫は扇子を口に当て、傍に立つ式神は表情を驚愕に染めていた。
「……神格化?」
「人間が神になる能力、ねぇ。まぁあともう一つ、能力があるみたいだけど」
「え、そうなのですか?」
「そうよ。まさか藍、あなた神力だけで、攻撃が当たらないだとか一瞬でそこそこの妖怪が消し飛んだとかできるとでも思っていたの?」
 九尾の式神、藍は横に首を振った。
「いえ……ただ、彼は計り知れません。神力が強大ならば、可能なのでは、と」
「神力は所詮、ただの力に過ぎない。電力だけで風は起こせないでしょう?電力は扇風機という“能力を持った”ものを通してようやく風を起こすことがで
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