5部分:第五章
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第五章
「何かな」
「おかしいか?」
「いや、赤と黒が好きだなと思ってな」
「それか」
「ああ。好きだな」
「そう言う健斗の方もな」
晴美はその彼を見て言葉を返す。
「青と白が好きだな」
「そうか?」
「制服だって青だろ」
「ああ、そうだ」
「それなら好きとしか思えないぞ。今だってそうなんだからな」
「実際に好きだ」
健斗も否定しなかった。
「青はな」
「そうだな」
「それでそっちは赤だな」
晴美に対してもこう返した。
「赤好きだな」
「好きだ。否定しない」
「そうだな。それでだけれどな」
「何はともあれ飲むか」
「残念会だな、お互いな」
こう話してだった。二人で居酒屋に入った。そしてそこで、であった。カウンターで晴美は大ジョッキを片手に持ってだ。そのうえで隣にいる健斗に対して言うのだった。
「まあ今はな」
「ああ、どうするんだ」
「飲む」
晴美の返答はこれだった。
「とにかく飲んで食うぞ」
「それで忘れるんだな」
「忘れてまた明日からだ」
こうも言う彼女だった。
「明日から頑張る」
「そうか、明日からか」
「そちらはどうするんだ?」
その大ジョッキのビールをごくごくと飲んでから問い返した。
「明日からは」
「そうだな。俺もな」
「うむ、健斗はどうするのだ」
「同じだな」
言いながらだ。彼は目の前にある焼き鳥の串を手にした。そしてそれを自分の口の中にやってだ。鶏肉と葱を食べるのだった。
それからだ。晴美に対して告げた。
「晴美とな」
「うむ、そうか」
「それならだ」
彼もまたビールの大ジョッキを手にした。そのうえでだ。
そのビールを美味そうに飲んでだ。言った。
「明日からだな」
「そうだ、また明日だ」
「明日からまた頑張るぞ」
「いちいち落ち込んでも何もならないからな」
「そうだな。本当にな」
「嫌なことは忘れることだ」
晴美もまた焼き鳥を食べた。
「そして明日からだ」
「また頑張るか」
「そうすることだ」
こんな話をしてだ。二人はこの日は焼き鳥とビールを楽しんだ。そしてその翌朝だ。
健斗は自転車で新聞を配る。相変わらず青い服を着ている。
そこに赤いジャージの晴海が前から走ってきた。そしてだった。
「今日もな」
「うむ、頑張ろう」
二人で微笑んで言い合う。そして別れる。
別れてすぐにだった。二人は朝顔を見た。健斗は青の、晴美は赤の。それぞれの朝顔を見た。そしてそのうえで先に進むのだった。この日の朝も。そしてそれからも。
明日も爽やかに 完
2010・10・25
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