第30話
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「……七乃を?」
思わず美羽は張勲と目を合わせる。張勲は自分の願いを瞳に込め見つめ返す。
(断って下さいお嬢様!)
その目に何かを感じ取ったのか、美羽は短く頷き笑顔を返した。
張勲は思わず涙が溢れそうになる。天然で、普段は自分がいなければ何も出来ない主だが、こうして大事なときは――
「もちろんじゃ兄様! 七乃は優秀ゆえ、きっと役に立つのじゃ!!」
張勲から光るものが零れ落ちた。最後まで渋っていた彼女は猪々子に襟首を掴まれ、まるで親猫に運ばれる子猫のような姿で外に連れて行かれることとなる。その悲壮感漂う姿に、袁紹の頭の中でドナドナの歌が再生されていた。
「さて、話しを聞こうではないか」
「えっと、何のお話しでしょうか〜?」
「ほう、それが答えか?」
「!?」
ここまできて未だ誤魔化そうとする張勲、彼女に対して袁紹は容赦ない一言をぶつけた。
――お前は敵か? それとも味方か?
付かず離れずな中立は認めない。この期に及んで返事を濁すのであれば容赦なく敵として認識する。
短い言葉で袁紹は自身の考えていることを、張勲に伝えたのだ。
「……わかりました」
少しの間をおいて、張勲は諦めに似た声と共に今までの出来事、自分の目的、それら全てを告白した。
彼女には袁紹と敵対して、完全に反袁紹派として活動する道も在ったが、その選択肢を思い浮かべることすら叶わない。それほどまでに目の前にいる男の強大さを理解していた。
単純に勢力として魅力的な方を選んだだけ、と言うのも理由の一つだが……
「おいおい、じゃあネエちゃんの目的はあのお嬢様を独り占めしたかっただけ?」
「だ、だけとはなんですか! お嬢様の可愛らしさは大陸一です!」
「そうであるぞ猪々子! それにお主も、相手が斗詩だったら――」
「あ〜わかる気がする」
「文ちゃん!? 麗覇様正気に戻って下さい!」
「元より正気! 美羽の可愛さは大陸から戦を無くせるぞぉぉぉぉッッッッ!」
兄馬鹿、ここに爆誕!
張勲の目的、美羽を独り占めにし愛でたいと言うそれを聞いて、袁紹は呆れるどころか共感し、猪々子をも巻き込み論理間の崩壊した空間を作り上げていた。
斗詩が懸命に諭そうとすも、狂気に近い袁術愛を発揮する実兄と側近の前には効果が薄い。
早い話ツッコミ不足である。
「まぁそれはさて置き張勲、お主の処遇だが――」
「はい! これからは袁紹派として保護して下さい」
「戯け、我がいつお主を我が陣に加えると言った?」
「え……えええええぇぇぇッッッ!?」
現金にも、今までの行いを手のひら返しでな
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