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恋姫†袁紹♂伝
第30話
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るように贅沢の限りを尽くした。

 そんな袁術が、皆に隠れ大事に保管しているものがある。兄袁紹からの手紙だ。
 内容はどれも当たり障りの無いもの。幼少の袁術に合わせて彼女が興味を持つような出来事や、新しい菓子がどこで作られたかなど。特別なことな書かれなかったが、それが唯一肉親の温もりを感じさせてきた。

 そしていつしか、手紙のやりとりを続ける中である疑問と、希望が生まれる。
 ――兄は皆が言うような怖い人間では無いのではないか。

「う、うぅ……」

 その疑問は袁紹の腕の中で解け、その希望は兄の温もりで叶ったのだ。







「なんと! 兄様が乗る御輿はそんなに速いのかえ?!」

「うむ! 百を超える兵も追いつけぬぞ!!」

「うぅ〜……兄様兄様、妾も乗ってみたいのじゃ」

「フハハ! 周りのことが片付いたら乗せてやろうぞ」

「やったのじゃ!!」

 肉親として互いを認識した二人は直ぐに打ち解けた。今はこれまでの距離を埋めるかのごとく談笑に花を咲かせている。基本袁術が質問し、袁紹が答える形だ。

「よ、よかったですね〜お嬢様」

 そんな胸温まる空間の中。張勲は一人、居心地の悪さを感じながら必死に相槌を打っていた。
 袁術との会話にだらしなく顔を惚けさせている袁紹だが、この後袁術の事に関して追及があるのは目に見えている。今更取り繕うことなど不可能に近いだろうが、何もしないよりはマシである。
 どのような状況でも張勲は最善を尽くしてきたのだから(我欲&袁術関連)

「麗覇様、そろそろ……」

「む、もうそんな刻限か」

「兄様、もう行ってしまうのかえ?」

 斗詩に促され、立ち上がった兄に対して袁術は涙目で質問する。

「ッ〜〜うおおおお我は当主としての責を放棄するぞ斗詩ぃぃぃッッ!」

「だ、駄目です! 文ちゃん手伝って」

「おう!」

「は、放せぇッ! 我は主ぞ!!」

「『主が間違えたら正すのは家臣の務め』……でしたよね?」

「……ハイ」

 両腕を斗詩と猪々子の二人に掴まれ、引きずられるようにして天幕の出口に運ばれる迷族。
 そんな兄の様子が可笑しかったのか、袁術は笑顔を取り戻していた。

「はぁ、大体……すぐ会えるではないですか」

「そうであった!」

 斗詩の言葉を聞き袁紹は姿勢を正し、袁術の方へと振り返る。あまりの変わり身の早さに斗詩と猪々子が呆れているが、そんなことはお構いなしに口を開く。

「此度の戦に当たり、我が陣で合同軍議を行う。美羽には是非――」

「いえいえお嬢様はまだ幼――」

「ぜったい行くのじゃ七乃!」

「ですよね!!」

「あ、それから張勲を少し借りて良いか?」

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