第30話
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るように贅沢の限りを尽くした。
そんな袁術が、皆に隠れ大事に保管しているものがある。兄袁紹からの手紙だ。
内容はどれも当たり障りの無いもの。幼少の袁術に合わせて彼女が興味を持つような出来事や、新しい菓子がどこで作られたかなど。特別なことな書かれなかったが、それが唯一肉親の温もりを感じさせてきた。
そしていつしか、手紙のやりとりを続ける中である疑問と、希望が生まれる。
――兄は皆が言うような怖い人間では無いのではないか。
「う、うぅ……」
その疑問は袁紹の腕の中で解け、その希望は兄の温もりで叶ったのだ。
「なんと! 兄様が乗る御輿はそんなに速いのかえ?!」
「うむ! 百を超える兵も追いつけぬぞ!!」
「うぅ〜……兄様兄様、妾も乗ってみたいのじゃ」
「フハハ! 周りのことが片付いたら乗せてやろうぞ」
「やったのじゃ!!」
肉親として互いを認識した二人は直ぐに打ち解けた。今はこれまでの距離を埋めるかのごとく談笑に花を咲かせている。基本袁術が質問し、袁紹が答える形だ。
「よ、よかったですね〜お嬢様」
そんな胸温まる空間の中。張勲は一人、居心地の悪さを感じながら必死に相槌を打っていた。
袁術との会話にだらしなく顔を惚けさせている袁紹だが、この後袁術の事に関して追及があるのは目に見えている。今更取り繕うことなど不可能に近いだろうが、何もしないよりはマシである。
どのような状況でも張勲は最善を尽くしてきたのだから(我欲&袁術関連)
「麗覇様、そろそろ……」
「む、もうそんな刻限か」
「兄様、もう行ってしまうのかえ?」
斗詩に促され、立ち上がった兄に対して袁術は涙目で質問する。
「ッ〜〜うおおおお我は当主としての責を放棄するぞ斗詩ぃぃぃッッ!」
「だ、駄目です! 文ちゃん手伝って」
「おう!」
「は、放せぇッ! 我は主ぞ!!」
「『主が間違えたら正すのは家臣の務め』……でしたよね?」
「……ハイ」
両腕を斗詩と猪々子の二人に掴まれ、引きずられるようにして天幕の出口に運ばれる迷族。
そんな兄の様子が可笑しかったのか、袁術は笑顔を取り戻していた。
「はぁ、大体……すぐ会えるではないですか」
「そうであった!」
斗詩の言葉を聞き袁紹は姿勢を正し、袁術の方へと振り返る。あまりの変わり身の早さに斗詩と猪々子が呆れているが、そんなことはお構いなしに口を開く。
「此度の戦に当たり、我が陣で合同軍議を行う。美羽には是非――」
「いえいえお嬢様はまだ幼――」
「ぜったい行くのじゃ七乃!」
「ですよね!!」
「あ、それから張勲を少し借りて良いか?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ