第30話
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「大変じゃ七乃! ハチミツが終わったのじゃ!!」
「はいは〜い。まだ予備が沢山ありますよぉ」
「うむうむ、流石七乃じゃ。……ところで妾達はまだ帰れないのかえ?」
「や〜ん。開戦前どころか、連合集結前に帰る事しか頭に無いお嬢様、素敵です〜。
でも残念ながら、お屋敷に帰れるのはまだまだ先ですよう」
「そ、そうなのかえ? 此処は居心地が悪い……早く帰りたいのじゃ」
連合の盟主を名乗り出たことで、どの勢力よりも逸早く陣を築いていた袁術軍。その中の一際豪華な天幕内で、軍の総大将たる袁術は不満を洩らし、張勲がそれを愛でていた。
袁術が天幕の居心地を批評したが、総大将かつ名族袁家の天幕だけあって、兵士達が使用するものとは比べ物にならない快適さを誇る。
しかしあくまで兵と比べた場合であり。物心ついた時から大きな屋敷内で、何も不自由することなく育ってきた袁術には不便極まりなかった。
「ハチミツが尽きる前に帰りたいのじゃ、それに――……ガクガクブルブル」
連合の勢力の中に、袁術の実兄袁紹もいる。皆から伝え聞いた彼を形容詞する言葉は、どれも幼い袁術の恐怖心を煽るには十分なもので、間だ見ぬ兄を想像しては怯えていた。
(キャー!! なにこの可愛い生き物!?)
震える主が可愛いのか、涙目になる袁術を他所に張勲が悶える。
「大丈夫ですよお嬢様。いざと言うときはこの七乃がお守りします!」
「な、七乃ぉ……」
(あ〜ん、可愛すぎです!)
事此処に至り、張勲は状況を楽観視していた。
先程、袁紹軍到着の連絡は受けている。だが袁紹は総大将、自陣を放って此方に来るほど愚かではない。来るとしたら陣営を整えてから、あの大軍では時間が掛かるだろう。
そうこうしている内に連合が集結、そのまま軍議を経て開戦まで持ち込めば良い。
主である袁術は幼い、それを理由に軍議の場には張勲が代理として参加、盟主を袁紹に譲る旨を伝え、開戦後は与えられた役割を適度にこなし、決着が付き次第帰還すれば良い。
張勲は未だ、兄妹の絆を断ち切ろうとしていたが――
「し、失礼致します。袁紹様がお見えになりましたぁッ!」
「えええええーーーーッッッッ!!!」
彼女の企みは、常識を物ともしない袁紹の前に脆くも崩壊した。
袁術に会う事を最重視していた袁紹は、『こだわり』を持って陣中の準備を簡略化し、従来のよりも迅速な方法を作り上げていた。
部品を生産し、現地で組み立てる建築方法――※『ぷれはぶ』である。
製造も組み立ても簡易で、少数でも手早く寝床を準備出来るそれは、大軍勢である袁紹軍の陣を瞬く間に完成させ、こうして他陣営を訪れる時間を作り上げた。
※『袁家式簡易
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