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第一章
明日も爽やかに
夏だ。だが朝は涼しい。
その朝にだ。一台の自転車が走っている。
そしてだ。家々の前に立ち止まってだ。新聞を入れていた。
そこに乗っているのは黒い髪を前だけ伸ばして左右は短くしている背の高い青年だった。黒い眉は長くへの字である。細くそれがやや斜め上になっている。
引き締まった口元にやや垂れた奥二重の目をしている。それが眉といささかアンバランスであるがかえって端整な印象を与えることになっている。服は上が青で下が白になっている。
身体は自転車に合わせたかの如くすらりとしている。その彼が新聞を配っている。
その彼のところにだ。一人の少女が来た。
赤いジャージに黒のロングヘアだ。背は高く走るその度に豊かな胸が揺れている。はっきりとした顔立ちをしており口は小さく鼻も整った形をしている。目は黒く実に大きい。眉は細く流麗な形である。赤いジャージ姿だ。
その少女がだ。彼のところに来て言うのだった。
「今日もおはよう」
「ああ、今日も早いな」
「試合が近いからな」
だからだと。青年に返すのだった。
「だからな」
「それでか」
「そうだ、それで健斗ももうすぐだったな」
「ああ、発表はもうすぐだ」
健斗と呼ばれた彼はだ。強い言葉で少女に返した。
「ピアノのコンクールの発表だ」
「そうか、お互いもう少しなんだな」
「晴美はバスケの試合か」
「ああ。これでもレギュラーだからな」
「だから余計に頑張るんだな」
「もっとも毎日この時間に走ってるがな」
晴美は笑ってこう健斗に答えた。
「それは変わらないがな」
「それでもだな」
「普段より気合が入っているのは確かだ」
そうだというのである。
「それはそちらもだな」
「そうだな。どうしてもな」
「お互い頑張ろう」
「お互いにか」
「そうだ、お互いにだ」
晴美はこう健斗に告げる。今は二人はある家の前にいて止まっている。朝のまだ弱い日差しの中でだ。穏やかに話すのだった。
「頑張るとしよう」
「そうだな。本当にお互いにな」
「コンクール、優勝するといいな」
晴美はにこりと笑ってこんなことも言った。
「毎日頑張ってるんだな」
「一応はな。ただしな」
「ただし。何だ?」
「俺より才能があって頑張ってる奴もいる」
決して楽観していない、そうした言葉だった。
それは顔にも出ている。そのうえでまた言うのだった。
「そういう奴がいるからな」
「油断はしないか」
「そうだ、それはしない」
こう言う健斗だった。
「絶対にな」
「武藤健斗、相手も見ているか」
「それは芳野晴美も同じじゃないのか?」
「私もか」
「そうだ。相手を侮らないよな」
「
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