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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第131話 太極より……
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。せやけど、本当に恐ろしいのは壁抜けや地下を走りぬける能力。それに、大量に使役している犬神。これは、どう考えても魔法に分類される能力だ」

 これらは普通、かなりの修業の成果として使用出来る能力。少なくとも俺には地行術を使用する事は出来ないし、使役出来る式神の数も桁が違い過ぎて話しに成らないレベル。

「邪神の中には、その人間が望めば何の裏付けもなく――表向きは何の対価も求めずに望む物。金品や地位、能力などを与えるヤツが居る」

 あの犬神使いは剣術を齧った、と言う程度の能力を示していたが、魔法に関しての知識は完全に素人だった。しかし、行使していた術は超一流。
 まして、あいつが行っている邪神召喚術はかなり大がかりな術式。やり方が判って居るからと言って、おいそれと実行出来るような術式ではない。

「あの夢の中で、俺とオマエが直接出会う事を阻止しようとした魔物の別の……本当の姿。そいつの事を知っているのなら、俺の言っている事が理解出来るな」

 奇形の君主アトゥとは、這い寄る混沌ニャルラトホテプの化身。特に重要な、まして強力な化身と言う訳でもないが、それ故に数多く見られて来た化身でもある。
 いくらハルヒの夢の中の世界とは言え、俺が所属している水晶宮を始め、天の中津宮が強い影響力を及ぼしている『日本』と言う世界に繋がっているハルヒの夢の中に、自分の半身と言える分身を送り込むのは危険過ぎる。
 人間の夢の世界の一番深い部分には民族や集団、更に人類すべてに繋がる集合的無意識が存在して居り、そこの最深部には自然や世界その物に繋がる部分が存在する。

 その部分を通じて俺はハルヒの夢の世界に侵入したのだし、這い寄る混沌の方も、そこからアトゥを送り込んだ。
 おそらくあの時、同時に現われた黒き仔山羊たちも同じように黒き豊穣の女神が送り込んで来た存在なのでしょう。

 彼女……涼宮ハルヒを護る為に。

「例えそうだとしても、それと、あの時のあんたの言葉との関連性は……」

 かなり弱い言葉による反論。同時に、少し浴衣の裾を気にするかのように、元の座布団の上へと座り直した。
 ……ここまで言っても分からないのか。

 微苦笑と言うヤツを浮かべる俺。いや、もうハルヒも分かっているはず。ただ、その答えをどうあっても俺の口から言わせたいだけ、なのでしょう。
 ほんの少し。左手を目一杯伸ばせば届く位置関係から、少し……ごく自然に左腕を伸ばせば彼女に届く距離まで近づく俺。
 そして……。

「最初に言わなかったか、太極より両儀が生じ――と」

 世界がつまらないから。自分の思った通りにならないから、全部、ガラガラポン。何もかもなかった事にして、自分好みの世界に作り変える。
 確かに本気でこんな事が出来ると思わなかったから
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