暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第131話 太極より……
[5/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「こんなヤツ、自衛隊の戦車や戦闘機が出て来ても倒す事は出来ん」

 おそらく、その気になれば、あいつ自身がありとあらゆる通常兵器を無効化出来ると考えても、強ち大げさとは言えない。そもそも、その程度の実力がなければ壁抜けや地行術など行使は出来ませんから。
 おそらく、感覚としては分子と分子の間をすり抜けるような感覚となるのでしょうが……。魔法と言う特殊な技術を行使しなければ、現在の科学技術でコレを再現する事は不可能です。
 更に、使役している犬神の数にも因りますが、日本の自衛隊すべて……表の部分に属する、通常兵器を使用する部隊すべてを同時に相手にしても勝てる可能性もあると思います。

 魔法と言うのは徹頭徹尾、そう言う能力。科学は同じ事が、誰にでも簡単に再現出来る技術や、同じ物を大量に生産して見せるなど、現状でもある面では魔法を凌駕していますが、未だ万能と言う訳ではありません。
 例えば、現状の俺なら、ちゃんと準備をしてさえ置けば、例え核兵器の直撃であったとしても無効化して見せますから。

「俺はそいつを相手に、ハルヒを抱えた状態で戦って簡単に勝てる存在だ、と言う事」

 ハルヒ、忘れたのか。俺はオマエさんの夢の世界で奇形の君主アトゥと戦って、倒した男だと言う事を。
 本来ならあり得ない記憶の内容を口にする俺。いや、この記憶の出所も既に分かっている。そう考えながら、自然な形で自らの胸に手を置く俺。
 今の俺の記憶ではない、ここに刻まれた記憶――

 その時の想いに。何が起こり、何を考えながらその場に向かったのか。そんな細かな事が、まるで自分が経験した事のように、脳裏に蘇え――
 その瞬間、今の俺の記憶ではない、過去の俺であった存在の想いに連れて行かれそうになる俺。あの時に俺の腕の中に居た少女への想い。
 ただ一度の別れになるなどと考えず、それまでと同じように何気なく、自然な――

 鼻の奥に強く感じた何かを無理矢理押し止め、少し強く瞳を閉じて、彼女に気付かれないように不自然な潤みを取り除く。
 大丈夫、気付かれていない……はず。

 そんな事ぐらい判って居るわよ。
 珍しく俺の事を肯定するかのようなハルヒの言葉。但し、

「でも、その事と、あの夜のあんたが言った言葉の意味と何の繋がりが有るって言うのよ」

 適当な事を言って煙に巻く心算なら、そんな小細工は通用しないわよ。
 それに続く普段通りの言葉。大丈夫。俺の不審な行動に彼女は気付いてはいない。

 少し崩した形になって居た足を、再びちゃんとした正座の形に整え、腕は綿入り袢纏(はんてん)の袖の中に入れるハルヒ。おそらく、普段なら胸の前に組んだ腕を見る事が出来るのでしょうが……。
 但し、現在の服装では、ゆったりとした袖の中にその両腕を隠す
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ