第6章 流されて異界
第131話 太極より……
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住人と、ハルヒ本人の評価が違い過ぎる事に端を発して居るのですが……。
おそらくハルヒ本人は、自らの事を世界の中で埋没する程度の、極々一般的な女子高生だと考えている。
確かにそれはある意味間違いではない。しかし、それでも矢張り、彼女は術者の間でならばかなり目立つ……有名な人間である事も間違いない。
少なくとも、ある程度の名の知られた組織の幹部クラスなら、彼女の事を知らない人間はいないでしょう。……そう言うレベル。例えば、兵庫県警に置かれた特殊資料課。昔で言うなら陰陽寮と言うべき部署の人間ならば全員が知っているでしょう。
それが彼女の望んだ結果と言うよりは、邪神に選ばれた贄だったから、……と言う点が問題だとは思いますが。
但し、そうだからと言って、ハルケギニアのアルマン・ドートヴィエイユやシャルル・アルタニャンなどのレコンキスタの三銃士や、異世界の人間に憑依していた悪霊ジュール・セザールのように、自らが神に選ばれた英雄だ、などと思い込まれるのも問題があるので……。
矢張り、少々、自らが卑小な存在である。世間一般の人間と何ら変わりない普通の人間だと思って居て貰った方が良いでしょうか。
しかし……馬鹿な事か。
「信用出来ようが、出来まいが、あの夜に世界の危機。それまでの歴史がすべて否定され、新たな――しかし、大半の地球産の生命体にとっては不幸しかもたらさない歴史が作り上げられようとした。それは事実」
そもそも、俺がハルヒの夢の中へと入って行ったのは、俺とオマエさんが友人関係だったから、だけが理由やない。
少しの哀しみにも似た感情を押し殺しながら、それでも表面上は何食わぬ顔でゆっくりと事実をありのままに告げる俺。そう、異世界同位体の俺がハルヒの夢の世界へと侵入したのは、それだけが理由ではなかった。
……はず。
ひとつは……俺がコイツを死なせたくなかった。あのまま、もしハルヒが世界を自分の思うままに改変しようとして、その際に誰も助けに行こう……思いとどまらせようとしなければ、彼女は間違いなく世界の防衛機構によって排除――つまり殺されて居たでしょう。
いや、邪神の一柱として滅せられる、が正しい表現か。
但し、この部分は今のハルヒに教える必要はない事。
もっと重要な事は……。
「昨夜、現われたあいつ。あの犬神使いの青年は普通に考えたら、メチャクチャ強い、と言う事は理解出来ているか?」
ほぼ不死に近い回復能力を示し、壁抜けを行い、地下を、ハルヒを抱えたまま時速三〇キロ程度でずっと走り続け、複数……ドコロか、ハルヒの見ている目の前で十頭以上の犬神を使役して見せた。
旅館の方の状況から考えると、最低でも三百頭以上の犬神を同時に操ったのは間違いないでしょう。
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