第6章 流されて異界
第131話 太極より……
[1/12]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
障子と襖により外界との境界が作られ、畳と木の香りに支配された部屋。
その部屋の中心……。固まったかのように、ただ無言で見つめ合うふたり。まるで夜の静寂がこの部屋にだけ凝固したかのような雰囲気。
閉じられた障子を背にして長方形のテーブルの、長い一辺のサイドに腰を下ろす俺。
部屋に備え付けられたテレビを背に、テーブルの短い一辺。向かって左側の一辺に腰を下ろすハルヒ。
長い黒髪を自然に流し、少し横座りになった姿が……何と言うか、妙に女性で艶めかしく感じる。
視線はハルヒの瞳に固定したまま。更に、考えている内容がかなり深刻な内容だけに、必要以上に強い瞳で見つめていたような気もする。
俺の視線を受けて、一瞬、怯んだかのようにハルヒが視線を外し、その微かな動きで背中まである長い黒髪がふわりと揺れ、胸元に光る銀が蛍光灯の光を反射する。
但し……。
但し、それも一瞬の事。まるで、俺の視線に怯んだ事が恥で有るかのように、彼女自身も俺と同じような瞳で見返して来た。
一瞬の空白。俺と彼女の間では珍しい静寂の空間。
……いや、これは睨んでいる訳ではない。おそらく真剣な表情と言うヤツ。
「ねぇ、ひとつ聞いても良い?」
ゆっくりと、一音一音を区切るように発音するハルヒ。但し、当然のように、その中に揶揄するような雰囲気はない。ただ少し気に成るのか、顔に掛かる長い髪の毛を少し掻き上げては後ろに流す。こんな動きを繰り返している。
成るほど、何となく伝わって来る物があるな。
「あの夜、あんたの言った事の意味を教えて欲しいの」
あの夜……。彼女の言葉の中で一番明瞭に発音されたのはこの言葉。
今の俺に、ハルヒを相手。それも夜に重要な会話を交わした記憶は、……昨夜交わした内容ぐらいしか覚えがない。しかし、その時の会話の内容を問い返して来た訳ではないだろう。
あの夜と言うのはおそらく、ハルヒが世界を再構成しようとした夜。その時に、異世界同位体の俺と有希が彼女の夢の世界へと侵入して――
その際に、俺とハルヒが【指向性の念話】によって何か約束を交わしたらしい。
そう。交わしたらしいのだ。但し、その詳しい内容までは資料には記載されては居らず、また、【指向性の念話】であったが故に、有希もその内容までは知らなかった。
成るほど。やや自嘲的な溜め息を心の中でのみ吐き出す俺。
何故ならば、この期に及んでも尚、俺は彼女から完全な信用を得られなかった、と言う事ですから。
それだけ強く、俺の異世界同位体はハルヒから信用されて居た、そう言う事なのかも知れないのですが……。
一瞬、何かを考えるかのように瞳を閉じる俺。手は自然な形で自らの左胸に。
その瞬間に、何故か自分で経験した訳でもない夜の映
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ