八節・“主君” への扉を開ける
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マーをかぶり、両手斧に勝るとも劣らない刃渡りの片手斧を持ち、反対側に握られる盾は片手装備扱いの筈であるのに、サイズは大型シールドにも匹敵する。
その恐怖を与える外見と、玉座で静かに待ち続けるその様相は、まさしく第1層迷宮区で嫌という程あふれていた『コボルド』の王に相応しいものであった。
一歩、また一歩と距離を縮め……しかし、彼らの気概をあざ笑い、焦らすように動きを見せない。
「何時来る……!?」
10歩も進んだ頃だろうか―――誰のものかも分からない呟きが、不気味なぐらい閑散としたフロアに響いた……まさに、その直後。
ボボボボボッ!! と次々音を立てて、扉付近から最奥部まで両端に幾つも立てられた燭台へ、誰の手が加えられるでもなく独りでに青色の火が灯ったのだ。
そのお陰もあり、薄暗く見通しの悪かった部屋内が一気に明るくなる。
だがこの現象はメリットを齎すと同時に、コボルドの“主君” を目覚めさせる事ともなり―――
「『グルルルゥゥ……アアアァァ…………!』
主君らしい、或いは王らしいとも言える緩慢な動作で、遂にコボルドの頂点に立つモンスターが戦闘態勢を取った。
濁った血色の相貌に獰猛な光を宿し、プレイヤー達を遠方より睥睨している。
ちぢみ切った体に冷水を掛けられたが如く、レイドメンバーの内3分の1が怯み、しかし残りは逆に打ちなる炎を滾らせ武器を構えてその目線を受け切った。
「全体構え……」
「『グルル……』」
ディアベルは剣を高々と上に、コボルドは武器を交差させ目の前に掲げ……仮想の空気を存在せぬ肺へと送り込み―――
「攻撃開始ーーーっ!!」
「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
「『オ゛オ゛オ゛オオォォォォォォォア゛ア゛アアアァァァァ!!』」
「「『『ギュアアアァァァァァッ!!』』」」
ほぼ同時に、戦闘開始のゴング代わりともなる、猛々しい叫び声を上げた。
パーティーごとに指定された役割、定められた役割をこなすべく……ある者等はコボルドの王へ、ある者達は護衛兵へ、ある者はパーティーの後ろへ、雄叫びを上げながら駆けていく。
「『ジイイィィアァァァ!!』」
「来たっ―――よし、俺達も行くぞ!」
「えぇ……!」
「はいよぉ! やったるわな!」
キリト、アスナ、グザの3人パーティーもまた、取り巻きのコボルド目掛けて駈け出した。
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