第二百三十四話 燃え落ちる寺その四
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「しかしこの穴は」
「はい、幸村殿は火薬で爆破してです」
「入口から埋めると言われましたが」
「それではです」
「後は」
「幸村殿ならば大丈夫だと思うが」
彼の強さを知っての言葉だ。
「しかしな」
「それでもですな」
「思い切ったことをされますな」
「これはまた」
「そう思う」
蘭丸にしてもというのだ。
「そうするにしてもな、しかし」
「しかし?」
「しかしとは」
「幸村殿に直江殿もおられ」
そしてというのだ。
「十勇士までいるのならな」
「そうしたことをされてもですか」
「幸村殿は無事に任を果たされ」
「そしてそのうえで」
「生きて戻られますか」
「あの方々なら大丈夫じゃ」
その幸村達ならというのだ。
「安土で会える、ではな」
「我等はですな」
「このままこの抜け穴を進み」
「そして、ですね」
「安土まで落ち延びるのですね」
「今はそれが務めじゃ、では進もうぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
蘭丸は寺で戦っていた者達を連れてそのうえで抜け穴を通ってだった。そのうえで本能寺を後にした。後は幸村と兼続、十勇士が残って戦っていた。
二条城では慶次と可児、それに飛騨者達が戦い続けていた。他の者達は既に抜け穴から逃げおおせている。
慶次も可児もこれまでは足で立っていた、自分の。
だが人がいなくなり敵が迫って来てだった、可児がだった。
右手を掲げると彼の馬が来たのでそれに飛び乗った、その彼を見てだった。
慶次は笑ってだ、こう言った。
「では御主もな」
「馬を呼ぶか」
「うむ、その時が来た」
笑みを浮かべて言うのだった。
「これよりな」
「そうか、ではな」
「松風、来るのじゃ」
慶次は笑って厩の方に顔を向けて言った。
「出番ぞ」
「ヒヒーーーン!」
その言葉に応えてだった、早速だった。
松風が声を挙げて来た、その松風が来ると。
慶次は朱槍を手にしたまま松風に飛び乗った、そのうえで言うのだった。
「さあ、ここから思う存分傾くぞ」
「今までは違っていたのか」
「これまでも傾いておった」
二条城の戦いにおいてだ。
「しかしじゃ」
「これからはか」
「これまで以上に傾く」
「そうして戦うか」
「この前田慶次郎利益一代の見せ場ぞ」
「それはわしもじゃ」
可児も笑みを浮かべて言って来た。
「わしも傾くぞ」
「ほう、御主もか」
「これまで御主とは武芸と傾きで競り合ってきたが」
「ここでもじゃな」
「そうする、よいな」
「望むところ、どちらがより傾くかな」
「これより勝負じゃ」
「ではな」
「さあ、どんどん来たぜ」
意気込む二人のところにだ、煉獄が屋根から飛び降りて言って来た。
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