第二百三十四話 燃え落ちる寺その二
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「実は既に寺の馬達も逃がしておったのじゃ」
「昨日のうちにですか」
「夜のうちにな。厩番にそうさせておった、ただ」
「ただ?」
「幸村と二条城の慶次と才蔵は違う」
彼等の馬はというのだ。
「特に慶次の馬はじゃ」
「確か松風といいましたが」
「あの馬は慶次から離れぬ」
そうした馬だからというのだ。
「わしも最初からな」
「残しておくことをですか」
「決めていた、それに松風がおった方がな」
「慶次殿もですね」
「上手く逃げられる」
それでというのだ。
「松風も残しておいた」
「左様でしたか」
「馬に乗れぬ者はここから六波羅に逃げ込んで潜む様に言っておいた」
「六波羅は大丈夫でしょうか」
「その者達を収めて逃げる様に告げておいた」
それも既にというのだ。
「暫く明智の兵は本能寺と二条城に留まる」
「戦の後も」
「その間にじゃ」
「馬を駆り安土まで」
「行くぞ、ただな」
「はい、武具はですね」
「このままだと重い、それにじゃ」
さらに言う信長だった。
「目立つ、だからな」
「捨て置くのですね」
「具足はここに置いておく、この廃家には下に隠された部屋がある」
「そこに捨て置き」
「我等は安土まで向かうぞ」
「わかりました、では」
帰蝶も頷いた、そしてだった。
信長は実際に具足を脱いだ、そして帰蝶もだった。
身に着けていた具足、それに陣羽織まで脱いでだった。そのうえで。
身なりを軽くさせてだ、信長が言うその馬屋まで行く。するとだった。
迎えた店の親父は確かな声でだ、信長に答えた。
「お待ちしていました」
「ではな」
「はい、既に馬は用意しております」
「二頭頼めるか」
「すぐに」
こうしてだった、親父が二頭の体格のいい馬達を持って来た、信長はその馬に飛び乗ると帰蝶に対して言った。
「御主も乗れ」
「はい、それでは」
「行くぞ、そして親父」
信長は親父に顔を向けて言った。
「後ではまた人が来る、その者達にもな」
「はい、馬は多く用意していますので」
「くれぐれも頼んだぞ、馬がなくなるか夜になればな」
「その時はですな」
「御主は家族と共に身を隠せ」
こう言うのだった。
「ここに難が来るやも知れぬからな」
「はい、都を出て馴染みの寺に潜みます」
「そうせよ、暫しな」
「そうさせて頂きます」
「後で褒美を送る、ではな」
「上様もお達者で」
親父は信長にこう告げてだ、信長はその言葉を受けるとだった。
帰蝶と共に馬を駆って安土に向かった、二人が去るとだった。
すぐに信忠も主従を連れて馬屋に来た、親父は彼等にも馬を渡してだった。
信忠も都を後にした、しかし。
親父は長益がだ、自分と従者達に多くの茶器を持たせているの
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