第二百三十四話 燃え落ちる寺その一
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第二百三十四話 燃え落ちる寺
本能寺の屋根に火矢が刺さった、屋根にいる十勇士達はその矢の火を術で消すが刺さる矢が多くなってきて。
「ううむ、これではな」
「我等の手に負えぬ」
「もう屋根はな」
「諦めるしかないな」
「そうじゃな」
こうお互いに話すのだった、そして。
下で戦う幸村にだ、こう問うた。
「殿、もう屋根は限界です」
「火がどうしようもありませぬ」
「それではです」
「我等は降りて宜しいでしょうか」
「致し方あるまい」
幸村は彼等の方を見上げて答えた。
「こうなってはな」
「はい、では」
「下に降りてです」
「戦わせてもらいます」
「これより」
「頼むぞ、ではな」
それではと話してだ、そしてだった。
十勇士は燃えようとしている屋根を放棄して下に降りてそこで戦いはじめた、次第に壁も槌等で壊されてそこに出来た穴からもだ。
兵達が入って来ていた、最早寺の堂自体も囲まれていた。
その状況を見てだ、蘭丸が信長に言った。
「上様、では」
「そろそろじゃな」
「はい火が回ってきましたし」
それにというのだ。
「敵も囲んできました」
「だからじゃな」
「そろそろです」
「うむ、下がるか」
「そうして下され」
「上様、最早です」
別の場所で戦っていた帰蝶が信長のところに来た、その手に持っている薙刀はもう柄のところまで真っ赤に染まっている。
「堂にまで兵が迫っていて鉄砲も撃ってきています」
「そうか、鉄砲までもか」
「ですから」
「蘭丸も言ったが頃合か」
「まずはお二人がお逃げ下さい」
蘭丸は 信長だけでなく帰蝶にも告げた。
「安土でお会いしましょうぞ」
「それではな」
信長は蘭丸の言葉に頷いてだ、そしてだった。
寺の中に入った、帰蝶も同行していた。二人は寺の奥の一室に入ってだった。そのうえで部屋の真ん中の畳をひっくり返して。
そこにある大きめの穴にだ、二人で入ってだった。
その暗い道を進んだ、そこでだった。
信長は前を見つつだ、帰蝶に話した。
「抜け出るところは家じゃ」
「家ですか」
「都の外れのな、廃れた家じゃ」
「誰もいない様な、ですか」
「そこに出る、そこからじゃ」
「はい、安土まで」
「逃げるぞ」
「近くに馬も置いてある」
その用意もしてあるというのだ。
「すぐに去るぞ」
「馬もですか」
「その廃家の近くに馬屋があるが」
その店はというのだ。
「そこは織田家と懇意でじゃ」
「馬をですか」
「既に相当用意してある」
「それでその馬を使い」
「うむ、安土まで去る」
そうするというのだ。
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