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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 1
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混じった顔色は、膝を突いていたさっきより数倍青白い。

「では、泉へ向かう途中で伺います。フィレス様もお戻りになられるなら、とりあえずお送りしますが。クロスツェルも行く?」
「いえ! お誘いは大変ありがたいのですが、私はバーデルに戻らないと、渡国許可や入街許可の問題がありますので!」

 間髪を容れず、右手を上げてスパッと断るクロスツェル。
 空間を移動するのだから、立ち入り許可には影響しないと解っている筈。
 よほどアーレストさんに会いたくないのね。

「私は、そうしてもらえると助かりますが。少々、お時間を頂けますか? 考えなければいけないことがありますので」
「急ぎではありませんから」
「ありがとうございます」

 姿勢良く一礼したフィレス様は両手を組んで、うーんと唸り始める。

 人間として生まれ、最近まで人間として生きてきたというフィレス様。
 赤子時のアリアと同様に翼や力を封印しても、以前の暮らしはよく続いて十数年程度だろう。
 他者に殺されるか、力が底をつくまでは無限に近い歳月を生き続けるし、一定以上は老化しないから、今の人間世界では人里に定住するのも難しい。
 とはいえ、いきなり姿を消しても様々な問題が残る。

 もしかしたら彼女をこそ神々の元へ送り出すべきなのかも知れないけど。
 それを決めるのは私ではないし。
 すべての可能性を提示しても、最終的に選び取るのは彼女自身だ。
 ゆっくり、しっかり考えていただこう。
 後悔だけはしないように。

「レゾネクト」
「?」

 涙を拭って私を見下ろすレゾネクトに、片翼型のブローチを掲げる。
 一度は自分の意思で手放した上に、壊してとまで願ってしまった物だし。
 本当は、こんなことを言って良い立場ではないけれど。

「私の記憶を読んで知ってると思うけど、このブローチは大切な友人からの贈り物だったの。今まで護っててくれて、返してくれて、ありがとう」
「…………ああ」

 レゾネクトはちょっと驚いた顔をして、それから にこっ と笑う。
 初めて見る笑顔だ。無知な子供のものとは違う無邪気な笑顔。どことなくアルフの笑顔と重なるのは、彼もアルフの言葉を受け継いだからね。
 ここまで来るともう、苦笑するしかない。

 あ、笑顔で思い出した。
 そういえば。

「ねえ。初めて会ったあの時、コーネリアと何を話していたの?」
「あの時? ……ああ、あれか」

 レゾネクトの腕がコーネリアの体を貫いた、あの瞬間。
 音を遮断していたから、私には聞こえていなかったのだけど。
 レゾネクトとコーネリアは、何か言葉を交わしていた。
 しかも、コーネリアは笑ったのよね。
 何故か、間違いなく笑いながら答えていた。
 冷静に考えな
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