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豹頭王異伝
曙光
老帝の祝福
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 吟遊詩人マリウスの歌を聴き、決意を新たにする北の強国ケイロニアの勇者達。
 同行する新生ゴーラ王国の若き戦士達、神聖パロ改めパロ解放軍の騎士と兵士達。
 両軍を率いるゴーラの冷酷王イシュトヴァーン、パロ解放軍の指導者アルド・ナリス。
 ヨウィスの民の血を引くひばり、妾腹の王子アル・ディーンの歌は両者の心にも響き渡った。
 其処にいたのは血塗られた中原の風雲児、ゴーラの僭王イシュトヴァーンではなかった。
 心魂を揺さぶる歌は時空を超越し紅の傭兵、ヴァラキアのイシュトヴァーンを甦らせた。
 歌は魔戦士にまざまざと、或る記憶を鮮明に想い起こさせていた。

 己が王となる予言を実現するべく軍資金となる伝説の財宝を求め、氷雪の国へ挑んだ冒険の数々。
 ヨツンヘイムへの入口を塞ぐ門番≪ゲート・キーパー≫、三つの頭を持つ伝説の魔犬。
 無敵の守護獣の心を宥め、眠りへと導いた伝説の歌い手オフィウスの再来。
 氷雪の国へ赴いた3人の放浪者、豹頭の傭兵グインと冒険を共にした第3の男。
 吟遊詩人マリウスの歌声に呼び醒まされた数多の記憶が再び、脳裏に映し出された。

 賭博師クルド、気の良いヴァラキアの娼婦達。
 風変わりなミロク教徒の少年ヨナ、ふとっちょオリー。
 黒い伯爵ラドゥ・グレイ、マグノリアの娘。
 時空連続点≪クロス・ポイント≫であったかもしれぬ、ヨツンヘイムへ至る洞窟と同様。
 ヴァラキアのイシュトヴァーンは我知らず、滂沱と流れ落ちる涙を意識していなかった。
 尽きせぬ追憶の旅に誘われ、ゴーラ王たる己を忘れ去っていた。

 神聖ゴーラ最後の皇帝サウル終生の御座所たる嘗ての帝都、哀しみの城塞都市サルヴィナ。
 旧ユラニア大公国の紅都アルセイス、いや新生ゴーラ王国の新都イシュタールにも歌は届いた。
 嘗てユラニアを影から操った薄情な旧支配者、闇の司祭グラチウスの発する強力な念波。
 パロ上級魔道師エルス率いる下級魔道師達が五芒星陣を組み、遠距離心話が受信された。
 マリウスの歌は魔道師達に増幅、中継≪リレー≫されイシュタールから溢れ出す。
 奔流と化し新生ゴーラ王国の領域≪エリア≫を覆い、人々の心に共鳴し響き渡った。

 嘗てのモンゴール大公国領も例外では無く、主都トーラスの下町にも歌は響く。
 アレナ通りの人々は煙とパイプ亭に一時、身を寄せたマリウスの記憶を鮮明に甦らせた。
 人懐こく愛嬌のある茶色の瞳を煌かせ、喝采を浴び楽し気に歌う巻き毛の吟遊詩人の姿を。
 ゴダロ一家は旅の途上にあり、店は閉ざされていたが。
 ケイロニア皇女オクタヴィア、パロ王子アル=ディーンの愛娘マリニアが誕生した産院。
 粗末な産婆の家に、人々は集った。

「新王子ミアイル様も誕生され、何時の日にかアムネリス様と共にトーラ
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